近年では配信システムの高度化により、より精緻なセグメント配信が実現し、販売促進やリピート率向上、顧客育成に大きな成果を上げています。本記事では、なぜ今メールマーケティングが必要なのか、メリット、効果が上がるポイントなどを詳しく解説します。
メールマーケティングとは

メールマーケティングとは、顧客や見込み客に戦略的にメールを配信し、関係構築と売上向上を実現する手法です。メールはWeb上のコミュニケーション手段のなかでも、直接個人にアプローチできる点が大きな特長です。
例えば、新商品の案内やキャンペーン情報、誕生日特典の案内など、顧客ごとに最適な情報を届けられます。
この手法は、インターネット黎明期から利用されてきました。現在では配信システムや分析技術が進化し、ターゲットの興味・属性などセグメント配信が可能となり、より細やかな施策へと変化しています。必要な人に、的確なタイミングで、顧客が求める情報を送るという考え方です。そうすることで長期的に見込み客の育成が可能になります。
なぜ今メールマーケティングが重要か?
現在でも「メールを確認する習慣」は根強く残っており、BtoB、BtoC問わずさまざまな業界で成果を出しています。既存顧客への継続利用の強化、新規顧客獲得、アップセル・クロスセルなど、あらゆるフェーズで「メール活用の強み」を業績につなげる企業が増えています。
総務省の「令和6年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、コミュニケーション系メディアの平均時間は、ソーシャルメディアの利用は多いものの、メール利用も幅広い年代に利用されていることが分かります。特にビジネス層や30〜50代を中心に、メールを日常の情報源として使う層が多いと考えられます。
こういったデータから、各年代によってメールが身近なメディアならば、メールマーケティングは有益なマーケティング施策となりえるのです。


メールマーケティングの目的

メールマーケティングの主な目的は単なる情報発信ではなく、「顧客の行動を促進する」ことが大きなポイントです。「お客様に何をしてもらいたいか?」を明確にしてから、メールを設計することが重要です。
購入・来店を促す販促目的
まず挙げられるのが、商品やサービスの購入、実店舗への来店へつなげる販促があります。新商品の発売情報や限定キャンペーン、セールの案内をメールで届けることで、顧客の購買意欲を刺激し、即効性のある売上拡大が期待できます。メールは一斉配信だけでなく、ユーザーの過去の購入履歴や興味関心に応じたパーソナライズ配信ができ、より効果的な販促が実現します。
リードナーチャリング目的
顧客を育てる「リードナーチャリング」は、顧客との接点を増やし、関係を深めるための重要な施策です。SNSやWeb広告とは異なり、すでに自社のリストや既存のユーザーに焦点を当てます。特にメールマーケティングは、顧客とより密接な関係を築き、信頼感を醸成するのに効果的です。顧客の悩みや課題に寄り添い、自社商品でどのように解決できるかを伝えます。また、競合他社と比較しながら、自社商品・サービスの優位性を訴求して受注や商談に導きます。
顧客満足度の向上や解約防止目的
顧客に商品やサービスを最大限に活用してもらうための情報を提供し、満足度を高めて解約を防ぐ目的もあります。具体的には、サービスのメンテナンス情報や新機能の紹介、そしてオススメの利用法などを積極的に伝えます。継続的な顧客との関係性を強め、サービスへの関心を高めることができます。
メールマーケティングの種類

メールマーケティングにはいくつかの種類があり、目的や状況に応じて使い分けることで、高い成果を得ることができます。代表的なメール施策として、「ステップメール」「メルマガ」「ターゲティングメール」「メール広告」「休眠発掘メール」の5つがあります。
ステップメール:関心度を段階的に高める育成に最適
ステップメールは、ユーザーの登録や問い合わせなど、特定のアクションをきっかけに、あらかじめ設定した複数のメールを自動で順次送信する仕組みです。例えば新規会員登録後、1通目で「ご登録ありがとうございます」、2通目で「サービス利用のヒント」、3通目で「限定オファー」など、顧客の関心や行動を段階的に高めていきます。ステップメールの特徴は、シナリオ設計次第で教育や動機づけ、購買意欲の向上など多様な目的が達成できることです。自動配信なので運用効率が高く、ユーザー離脱を防ぎながら効果的なリードナーチャリング(育成)が可能です。
メールマガジン:広く情報発信しリテンション強化
メールマガジン(メルマガ)は、登録者全員に同じ内容を定期的に配信するメールです。メルマガの強みは、ブランド認知や関係維持、新規キャンペーンの告知など、多目的に使えるため、多くの人に伝えたいタイムリーな情報を発信する場合に向いています。例えば、新商品やサービスの紹介、最新キャンペーンの案内、コラム・知識のお役立ち情報などです。
ただし、読者にとって広告色が強いと開封率や配信解除率が悪化するため、顧客目線のコンテンツ設計が重要です。
ターゲティング(セグメント)メール:個別に刺さる情報提供で効果アップ
ターゲティングメールは、条件に絞ってターゲットに合わせた必要情報を届けるメールです。例えば、誕生日メール、特定商品購入者向けの追加提案、地域ごとキャンペーン案内など、「顧客一人ひとりの状況」に合わせて最適なオファーや情報を届けられる点が大きなメリットです。
その条件とは、顧客属性・興味関心・過去の購入履歴など、詳細なデータに基づいて内容や送信タイミングをパーソナライズします。CRM(顧客管理システム)やMA(マーケティングオートメーション)との連携で、より高度なセグメントマーケティングも実現可能です。これにより、無関心層への一斉配信より高いエンゲージメントや購買率の向上など、成果を最大化できます。
メール広告
メール広告は、自社リストではなく外部メディアや他社メールマガジンを通して配信される広告メールです。リストを持たない新規事業や、潜在顧客への認知拡大、リード獲得施策として活用されます。メール広告の良い点は、ターゲットセグメント選定や配信母数の調整ができること、既存メディアの信頼度やテーマに乗ることで開封率も期待できることです。一方で、他社のルールや基準に従うため、配信内容やクリエイティブの自由度はやや限定されます。費用は配信数やリード獲得数に応じた従量制が主流です。
休眠発掘メール
休眠発掘メールは、一定期間アクションの無かった会員や顧客に対して「再度興味を持ってもらう」ためのメール施策です。例えば、前回購入から半年以上経過した顧客向けに「再来店特典」や「アンケート」などを案内し、関係の再構築を目指します。休眠発掘メールのポイントは、単なるアプローチでなく『顧客心理に寄り添ったコンテンツ設計』です。メリット・特典をしっかり伝えたり、パーソナライズしたメッセージを送ったりすることで反応率をみます。反応が得られれば、再度通常のマーケティング施策につなげることができるでしょう。
メールマーケティングのメリット

メールマーケティングは多くのメリットを持つ施策です。以下、詳しく紹介します。
メリット1:低コストで始められる
メールマーケティングは、Web広告や紙媒体に比べて圧倒的にコストを抑えられるのが魅力です。専用の配信ツールを導入したり、メールのデザインや内容を作成したりする費用はかかりますが、大々的な広告キャンペーンやイベント開催に比べるとはるかに安価です。そのため、予算に限りがある企業でも手軽に始めやすく、高い費用対効果を期待できます。
メリット2:離脱を防ぎ、顧客との関係を深める
すでに興味を持ってくれた「見込み客」や「既存顧客」を対象に行うため、効果が出やすいのが特長です。定期的にメールを配信することで、顧客との接点を継続的に持ち続け、関心を失ってしまったり、他社に流れたりするのを防ぎます。ユーザー一人ひとりに合わせた情報を提供すれば、より深い信頼関係を築くことができます。
メリット3:高い成果が期待できる
既存顧客をターゲットに絞ってアプローチするため、高い成果が期待できます。顧客の興味や行動履歴に合わせて内容をパーソナライズすれば、広告よりも高い反応率を得られる可能性があります。日常的にチェックされるメールというツールを使って、顧客の購買意欲を自然に高めていけるのです。
メリット4:効果検証が簡単で改善しやすい
配信したメールは、開封率やクリック率、コンバージョン率といった効果を簡単に測定できます。これらのデータを分析することで、どの内容が顧客に響いたのかを正確に把握し、次のメールに活かせます。このPDCAサイクルを効率的に回せるため、より精度の高い施策へと改善し続けられます。そして、その積み重ねが顧客のブランド愛着を高め、最終的に口コミやリピート購入といった形で企業の成長を後押しします。
メールマーケティングのデメリット・注意点
メールマーケティングはメリットの多い施策ですが、同時に注意点が存在します。これらを理解し、万全の体制で取り組むことが成功への近道です。
中長期での運用が必要
メールマーケティングは短期間で成果を急激に得ることは難しいケースが多いです。配信リストの取得・精度向上、コンテンツ企画・シナリオ設計、配信頻度の調整など、様々な要素が複雑に絡み合って成果に繋がるため、「施策開始から数週間〜数カ月」にわたり継続的な改善が必須となります。
また、リストの質や規模が不十分な初期フェーズでは、期待するほどの反応が得られないこともあり、忍耐強くデータを分析し、配信内容を修正する中長期的な努力が重要です。最初から「すぐに成果が出ない」前提で計画し、指標や目的も中長期的利益を意識して設定しましょう。
コンテンツ企画・制作が手間
メール配信は定期的かつ戦略的に運用することが求められるため、毎回異なるコンテンツを企画・制作する手間がかかる点も注意が必要です。読者が求めている情報やタイムリーなニュース、心を動かすキャンペーンなどをコンスタントに発信する必要があるため、マーケティング担当者の負担は意外と大きくなりがちです。
加えて、配信タイミングや文面の最適化、セグメントによる文言分岐、クリエイティブの工夫など、細かな作業が積み重なります。外部リソースやテンプレートの活用、先行スケジュール作成など、運用効率アップの工夫が求められます。また、成果が出ていない場合は「コンテンツ刷新」が必要になることも多いため、企画力・情報収集力も問われます。
メールマーケティングの効果を高めるコツ
メールマーケティングで高い効果を発揮するためには、いくつかのポイントを押さえた運用が不可欠です。
適切なセグメントとタイミングが重要
ユーザーにとって内容が合わなかったり、送る量が多すぎたりすると、「いらない」「迷惑だ」と思われ、簡単にメールを解除されてしまいます。そのため、ユーザーを適切にセグメントして、配信するタイミングをターゲットに合わせます。どんな人にどの情報を送るかを意識することが重要です。
ABテストを実施して効果検証する
開封率を上げるには、効果の違いを測定するABテストを実施します。具体的には、差出人名(ブランド名・担当者名)、件名の工夫(限定感・メリット訴求)、配信対象者を2パターン用意し、検証します。この検証は、ユーザーにマッチしたメール設計を実現するのに有効です。
件名には「具体的な数字」「限定オファー」「読者メリット」を伝えると、開封率が向上する傾向があります。
ゼネラルアサヒの事例
化粧品・健康食品会社 A社さま
お試し商品から定期購入への引き上げ目的の、顧客の心理変化に寄り添ったステップメールの設計
この施策は、DMやSNSと連携したクロスメディアキャンペーンの一つとして実施。顧客といくつかの接点を確保しつつも、メールをメインとしたコミュニケーションで顧客の育成を効率的に進めました。
注文後1ヵ月の間に、「商品理解の促進」「効果への期待感の醸成」「リピートのきっかけ作り」という3つのフェーズに分けてメールコミュニケーションを設計しました。
具体的な施策は次の通りです。
購入直後: 1通目のメールで、「商品の正しい使い方」や「成分がもたらす効果」といった啓蒙内容を訴求。
2〜3週間後: 2通目のメールで、「商品を使用しているお客様の声」や「よくある質問」を配信し、商品への信頼感を醸成。
ラスト3日間: 購買意欲が高まった顧客に対し、「今だけの定期購入限定オファー」をラストメッセージとして配信。
結果:
ステップメール施策後、定期購入への引き上げ率が200%UPしました。
メールマーケティングの始め方

ここでは、ポイントを押さえながら、メールマーケティングを進める一連の流れをご紹介します。
STEP1. 目的を明確にする
最も重要なのは「何を達成したいのか」という目的の設定です。
例えば、「メールでのお問い合わせを月○件に増やす」といったKGI(重要目標達成指標)を具体的に設定し、それを達成するためのKPI(重要業績評価指標)、つまりメールの開封率やCTR(クリック率)を設定します。
目的を明確にすることで、効果的な配信シナリオやコンテンツが考えやすくなり、成果につながるメールマーケティングの設計が可能になります。目的設定は、施策全体の指針となるため、じっくりと検討しましょう。
STEP2. 配信リストを準備する
メールを届ける先のリストの準備も重要なステップです。ユーザーのメールアドレスだけでなく、名前や性別、購入履歴、興味・関心などの属性情報を整理しておくと、後のセグメント配信がスムーズに行えます。
リストはWebサイトの会員登録、資料請求やイベント参加時の取得、SNSやオフラインイベントからの取得など、多様なチャネルから集めます。また、リストの正確性・鮮度も重要なので、定期的なクリーニング(古いアドレスの削除や無効メールの除去)も忘れずに行いましょう。
STEP3. コンテンツを企画する
メールの本文は、受け取る顧客の興味やニーズに沿ったものにすることが重要です。単なる宣伝メールではなく、「読みたい」「役に立つ」と感じてもらえる内容を目指しましょう。
カスタマージャーニーやペルソナを設定して企画を進めると、読者の心に響くコンテンツを具体的にイメージしやすくなります。さらに、そのメールを読んだ顧客が次の行動(購入や問い合わせなど)につながるよう、ゴールを明確に設定することも大切です。
メール配信後、開封してもらうためには、件名も非常に重要です。「限定」「割引」「〇〇さんへ」といった言葉を使って、特別感やメリットを訴求することで、開封率を高めることができます。
STEP4. 配信システムを選ぶ
メール配信には専用のツールやサービスを使うのが一般的です。自社専用に構築する方法もありますが、初心者はまずクラウド型の配信サービスを利用するのがおすすめです。
配信システムは、使いやすさ、セグメント配信やABテスト機能の有無、分析レポートの充実度、コストなどを比較して選びましょう。小規模であれば無料プランがあるサービスも多く、まずは試してみるのも良いでしょう。システムの導入を通じて運用効率を高めることが、継続的な成果に繋がります。
配信システムの一例)
HubSpot (ハブスポット):メールマーケティング、CRM、セールス、カスタマーサービスなどを統合した、オールインワンのマーケティングプラットフォームです。
STEP5. 初回配信の準備とテストを行う
配信リストやコンテンツ、システムが整ったら、実際にメールのテンプレートを作成してテスト配信を行います。配信前に内容の誤字脱字、リンク先の確認、多様なメールクライアントやデバイスでの見え方チェックを徹底しましょう。
テスト配信では、実際の受信環境で開封率やリンク遷移の動作確認も行い、問題点を洗い出して改善を図ります。配信日時やタイミングも重要なので、最適な日時設定もテスト時に検討します。
STEP6. 配信後の効果測定と改善を繰り返す
メールを配信したら、必ず効果を計測して振り返ることが大切です。開封率、クリック率、コンバージョン率、配信停止率などの指標を確認し、どのコンテンツや配信方法が効果的だったか分析します。
効果が高かった部分は継続・拡大し、逆に反応が悪かったポイントは原因を探って改善を試みましょう。PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回しながら、内容やターゲティングの精度を上げていくことで、メールマーケティングの成果が徐々に高まっていきます。
STEP7. 継続的な運用とコンテンツ改善
メールマーケティングは単発の施策に終わらせず、中長期的に継続して運用しましょう。配信頻度の調整やリストの更新、新しいコンテンツの追加など、定期的に見直しや改善を行います。
また、受信者の反応や市場の変化に応じて、柔軟に戦略を変えることも重要です。これにより、配信効果の最大化と顧客との良好な関係構築が可能となり、ビジネスの成長につながります。
まとめ
メールマーケティングは、低コストで効果的に顧客とつながり、売上や問い合わせを増やす施策として、多くの企業・通販事業者に支持されています。ただし、効果を得るには明確な目標設定やユーザーに寄り添ったコンテンツ企画、継続的な改善が欠かせません。適切な配信シナリオと分析を通じて、顧客の購買意欲を高め、良好な関係を築くことが成功のカギとなります。ぜひ本格導入を検討し、成果につなげましょう。
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