「集客施策は成功しているのに、最終的な売上が伸び悩んでいる」
もしそのような課題をお持ちなら、見るべきはLPや広告ではなく、**「決済画面(チェックアウトフロー)」かもしれません。 一般的に、ECサイトでカートに商品を入れたのにも関わらず離脱してしまう「カゴ落ち」はBaymard Instituteの2025年公開データでは、世界平均のカゴ落ち率は約70%とされています。
ここで発生しているのは、単なるユーザーの心変わりだけではありません。システムの挙動、エラーの不親切な表示、入力の煩雑さといった「構造的な摩擦(フリクション)」**が、本来得られるはずだった売上を阻害しているのです。
本記事では、システム連携とUI設計の観点から、「決済完了率(CVR)」を最大化するための実践的な改善術を解説します。決済エラーの技術的な背景から、入力フォーム最適化(EFO)の最新トレンドまで、明日から実装を検討できる具体策をお伝えします。
なぜ「購入ボタン」の手前で離脱するのか?

ユーザーが購入完了の直前で離脱する原因は、大きく分けて3つのレイヤーに分類できます。原因を正しく切り分けることが、適切なソリューションへの第一歩です。
心理的摩擦(Uncertainty)
「送料を含めた総額がいくらになるのか最後までわからない」「いつ届くのか明記されていない」といった情報の不透明性は、決済直前でユーザーにブレーキをかけさせます。特に、決済確認画面で予期せぬ「手数料」が加算された瞬間、離脱率は跳ね上がります。
システムエラー(Technical Friction)
ユーザーに購入意思があるにも関わらず、システムがそれを拒絶してしまうケースです。クレジットカードのオーソリエラー(与信枠不足など)に加え、近年課題となっているのが3Dセキュア(本人認証)等のセキュリティ認証時のドロップオフです。
決済手段のミスマッチ(Inconvenience)
「普段使っているID決済(Amazon Payや楽天ペイなど)が使えない」と分かった時点で、クレジットカード情報の入力を面倒に感じて離脱するケースです。特にスマートフォン経由の購入において、この傾向は顕著です。
決済エラーを減らすシステム・設定側の対策

ユーザーの操作ミスではなく、システムや仕様の壁によって発生する機会損失を防ぐには、バックエンド側の設定見直しが必要です。
3Dセキュア2.0(EMV 3-D Secure)の最適化
不正利用対策として必須となりつつある3Dセキュアですが、導入によりカゴ落ち率が上昇するリスクも孕んでいます。 重要なのは、すべての取引にパスワード入力を求めるのではなく、リスクベース認証を活用した「フリクションレスフロー」を適用することです。低リスクと判断された取引では認証画面をスキップさせることで、セキュリティとCVRの両立が可能になります。
エラーハンドリングのUX改善
決済ゲートウェイから返されるエラーコードを、そのまま「エラーが発生しました」と表示するのは悪手です。 APIが返すコードをフロントエンド側で翻訳し、「カード番号の桁数が不足しています」「有効期限の『月』をご確認ください」といった、ユーザーが次のアクションを取れる具体的なメッセージに変換して表示する実装が不可欠です。
「面倒」を排除する決済画面のUI設計

入力フォーム最適化(EFO)は、マーケティングの基本ですが、以下のポイントを徹底することで「入力疲れ」による離脱を防げます。
入力支援(オートフィル)とリアルタイムバリデーション
「確認画面に進む」ボタンを押した後でエラーを返すのではなく、入力中のストレスを極限まで減らす仕様を導入しましょう。特にスマートフォンでは、手入力をさせないことが重要です。
- ブラウザ自動入力(Autocomplete属性)の最適化
- 入力内容のリアルタイム判定(エラーの即時表示)- 全角・半角の自動変換
- 郵便番号からの住所自動入力
特に、HTMLのAutocomplete属性を正しく記述し、ブラウザに保存された「氏名・住所・カード情報」をワンタップで呼び出せるようにすることは、現代のEFOにおいて必須要件です。
ゲスト購入導線の確保
会員登録を強制することは、CVRを大きく下げる要因の一つです。 初回購入時は「会員登録せずに購入」の導線を太く確保し、決済完了後のサンクスページで会員登録を促す(パスワードを決めるだけで登録完了とするなど)フローに変えるだけで、転換率は大きく改善します。
ID決済導入による「入力レス」化
Amazon Payや楽天ペイなどのID決済は、住所やカード情報の入力を完全にスキップできるため、最強のEFOと言えます。特にモバイルユーザーが多い商材では、ID決済の有無がCVRを左右する決定的な要因となります。
決済手段別の特性とCVRへの影響

決済手段のラインナップは、ターゲット層の離脱を防ぐための「セーフティネット」です。
クレジットカード決済
最も利用率が高い反面、情報入力の心理的ハードルも高い決済方法です。SSLサーバー証明書のサイトシール表示や、主要ブランドロゴの明示など、「このサイトにカード情報を預けても安全だ」というトラストシグナルを視覚的に配置することが重要です。
BNPL(後払い決済)の活用
クレジットカードを持たない若年層や、「初めてのサイトでカードを使いたくない」という慎重なユーザー層にとって、後払い決済は強力な購入の後押しとなります。 以前は未回収リスクが懸念されましたが、現在は保証型の後払いサービスが主流であり、CVRの底上げと新規顧客獲得の観点から導入価値は非常に高いと言えます。
改善事例とKPI設計

理論を実行に移し、成果を出した事例と、その効果を測るための指標について解説します。
A社の改善事例(決済完了率 改善比110%)
アパレルECを展開するA社では、カート追加後の離脱率が高いことが課題でした。分析の結果、3Dセキュア認証画面での離脱と、スマホでの入力離脱が判明。
【実施した施策】
1. 3DセキュアのUI最適化: リスクベース認証により「追加認証(チャレンジ)」が必要と判断された場合に限り、画面遷移前に「本人認証画面へ移動します」という案内モーダルを表示。唐突な遷移によるユーザーの動揺と離脱を防いだ。
2. Amazon Payの導入: 入力の手間を省略する選択肢を追加。
3. エラーメッセージの改修: エラー理由を具体的に表示するようシステム改修。
これらの施策により、決済完了率は改善前と比較して110%に改善。広告費を増やすことなく、売上を大幅に伸ばすことに成功しました。
追うべきKPIは「決済完了率」
単なる「CVR(訪問数に対する購入数)」では、集客の質による変動が混ざってしまいます。決済フローの改善効果を測るには、以下の指標をモニタリングしてください。
- 決済遷移後完了率: 決済画面(入力画面)に到達したユーザーのうち、購入完了まで至った割合。
- オーソリ承認率:決済リクエストのうち、正常に承認された割合(システムエラーの検知に有効)。
まとめ
ECサイトにおける「決済完了率」の改善は、穴の空いたバケツを塞ぐ作業に似ています。どんなに優れた集客を行っても、決済フローに不備があれば、水(売上)は漏れ続けてしまいます。
重要なのは、「システム(バックエンド)」と「UI(フロントエンド)」の両輪で対策を行うこと。技術的なエラー対策と、ユーザー心理に寄り添ったデザイン改善を同時に進めることで、確実に成果は現れます。
ゼネラルアサヒでは、多くのEC事業者様との取引実績を活かし、マーケティング戦略だけでなく、システム連携やUI/UX改善を含めた包括的なご支援しています。機会損失をなくし、売上を最大化したいとお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
