ペット用品のEC事業を運営していて、「この表現って薬機法的に大丈夫?」と不安になったことはありませんか?実は、ペット用品の販売においても薬機法の規制対象となるケースが多く、知らずに違反してしまうと業務停止命令や課徴金などの重い処分を受ける可能性があります。
特に、サプリメントやシャンプー、デンタルケア用品などの健康・美容関連商品を扱うEC事業者にとって、薬機法への理解は避けて通れません。本記事では、ペット用品ECにおける薬機法の基本から、使ってはいけないNGワード、そして売上を落とさずに法令を遵守する方法まで、実践的な内容を詳しく解説します。
ペット用品ECで注意すべき薬機法の基本

薬機法がペット用品にも適用される理由
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、人間用の医薬品だけでなく、動物用医薬品も規制対象としています。ペット用品の中でも、特に以下のような商品は薬機法の規制を受けやすいため、EC事業者は細心の注意が必要です。
薬機法の規制対象となりやすいペット用品
- サプリメント・健康補助食品
- シャンプー・リンス・スキンケア用品
- デンタルケア用品(歯磨き粉、マウスウォッシュなど)
- 虫除けスプレー・防虫グッズ
- 消臭・除菌スプレー
これらの商品を「医薬品的な効能効果」を謳って販売すると、未承認医薬品の販売として薬機法違反に問われる可能性があります。例えば、ペット用サプリメントで「関節炎が治る」「病気が予防できる」といった表現を使用すると、医薬品的効能効果の標榜として違法行為となってしまいます。
動物用医薬品・医薬部外品・雑貨の違い
ペット用品は大きく3つのカテゴリーに分類され、それぞれ広告表現の制限が異なります。
1. 動物用医薬品
農林水産大臣の承認を受けた製品で、病気の診断・治療・予防を目的とするもの。フィラリア予防薬、ノミ・ダニ駆除薬などが該当します。これらは動物病院や許可を受けた販売店でのみ取り扱い可能で、一般的なECサイトでは販売できません。
2. 動物用医薬部外品
医薬品に準ずるもので、衛生害虫の防除、口臭防止、育毛などの目的で使用される製品。こちらも農林水産大臣の承認が必要ですが、医薬品より規制は緩やかです。
3. 雑貨(ペット用品)
上記以外の一般的なペット用品。サプリメント、シャンプー、おもちゃなどが該当します。医薬品的効能効果を標榜することはできませんが、商品の特徴や成分などを説明することは可能です。
ECサイトにおける薬機法遵守のポイント
オンラインでペット用品を販売する際は、以下の点に特に注意が必要です。
商品ページの表現チェック
商品名、キャッチコピー、商品説明文、画像内のテキストなど、すべての表現が薬機法の規制対象となります。特に見落としがちなのが、画像内に記載されているテキストや、レビュー欄での効果効能に関する記述です。
広告・SNSでの訴求
リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS投稿なども薬機法の規制対象です。「ペットの健康寿命を延ばす」「老化を防ぐ」といった表現は、たとえ広告であっても使用できません。
メルマガ・DMでの表現
定期的に配信するメルマガやDMも広告の一種として扱われるため、薬機法を遵守する必要があります。新商品の紹介や既存商品の再訴求を行う際も、効能効果に関する表現には十分注意しましょう。
NGワード集!使ってはいけない表現一覧

病気・症状に関するNGワード
ペット用品の販売において、最も注意すべきは病気や症状に関する表現です。以下のような表現は、医薬品的効能効果の標榜として薬機法違反となります。
治療・改善を連想させるNGワード
- 「関節炎が治る」「皮膚病が改善する」
- 「アレルギーを緩和」「炎症を抑える」
- 「痛みが和らぐ」「かゆみが止まる」
- 「下痢が治る」「便秘を解消」
- 「食欲不振を改善」「嘔吐を防ぐ」
予防効果を謳うNGワード
- 「がんを予防」「心臓病を防ぐ」
- 「認知症の予防に」「白内障を予防」
- 「歯周病を防ぐ」「虫歯にならない」
- 「肥満を防止」「糖尿病の予防」
これらの表現は、たとえ「〜をサポート」「〜に配慮」といった柔らかい表現に変えても、文脈によっては薬機法違反と判断される可能性があります。
身体機能への作用を示すNGワード
ペットの身体機能に直接作用することを示唆する表現も、薬機法上問題となります。
内臓機能に関するNGワード
- 「肝機能を高める」「腎臓の働きを助ける」
- 「心臓を強くする」「血圧を下げる」
- 「免疫力を上げる」「代謝を促進」
- 「ホルモンバランスを整える」
外見・体質改善に関するNGワード
- 「毛艶が良くなる」「被毛がふさふさに」
- 「体臭が消える」「口臭がなくなる」
- 「若返る」「老化を止める」
- 「体質改善」「デトックス効果」
効果の断定・誇大表現
効果を断定的に表現したり、誇大に表現することも薬機法違反となります。
断定的表現のNG例
- 「効果があります」「効きます」
- 「実証済み」「科学的に証明」
- 「獣医師推奨」(実際に推奨していない場合)
- 「動物病院で使用」(事実でない場合)
誇大表現のNG例
- 「驚きの効果」「奇跡の〜」
- 「たった○日で改善」
- 「99%のペットに効果」
- 「他社製品より優れた効果」
使用前後の比較表現
ビフォーアフターの写真や、使用前後の変化を強調する表現も注意が必要です。
NGとなる比較表現
- 使用前後の写真で明らかな改善を示す
- 「使用前は元気がなかったが、使用後は活発に」
- 「○○だったペットが、今では△△に」
- グラフや数値で効果を示す(医薬品的効能を示唆する場合)
これらの表現は、商品の効果を暗示的に伝えるものとして、薬機法違反と判断される可能性が高いです。
薬機法に抵触しない効果的な訴求方法

成分・原材料の特徴を活かした訴求
薬機法に違反せずに商品の魅力を伝えるには、成分や原材料の特徴を正しく伝えることが重要です。
OK表現の例
- 「グルコサミン・コンドロイチン配合」
- 「オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を含有」
- 「天然由来成分を使用」
- 「保存料・着色料不使用」
- 「獣医師監修のレシピ」(事実の場合)
成分の一般的な特徴を説明することは可能ですが、その成分がペットの身体にどのような効果をもたらすかを断定的に述べることは避けましょう。例えば、「グルコサミンは軟骨の構成成分です」という事実の説明はOKですが、「グルコサミンで関節が良くなります」という表現はNGです。
使用感・嗜好性での差別化
ペット用品の場合、使用感や嗜好性(食いつきの良さ)で差別化を図ることも効果的です。
使用感での訴求例
- 「さらさらとした使い心地」(シャンプー)
- 「べたつかない仕上がり」(スキンケア用品)
- 「泡立ちが良い」(シャンプー)
- 「すすぎやすい」(口腔ケア用品)
嗜好性での訴求例
- 「食いつきが良い」(サプリメント)
- 「おやつ感覚で与えられる」
- 「嫌がらずに食べてくれる」
- 「チキン風味で美味しい」
飼い主の声を活用した訴求
個人の感想として飼い主の声を掲載することは、薬機法上問題ありません。ただし、以下の点に注意が必要です。
飼い主の声を掲載する際の注意点
- 「個人の感想です」と明記する
- 効果効能を断定する表現は避ける
- 誇大な表現は編集・削除する
- 症状の改善を示唆する内容は掲載しない
OK例
- 「うちの子は喜んで食べています」
- 「以前より活発になった気がします」(個人の感想として)
- 「毛並みが良くなったように感じます」(個人の感想として)
- 「続けやすい価格で助かっています」
ライフスタイル提案型の訴求
ペットとの暮らしをより豊かにするという観点から、ライフスタイル提案型の訴求も効果的です。
ライフスタイル訴求の例
- 「愛犬との毎日の習慣に」
- 「大切な家族の健康管理をサポート」
- 「シニア犬との暮らしに寄り添う」
- 「アクティブなペットライフを応援」
これらの表現は、直接的な効能効果を謳わずに、商品がもたらす生活の変化や価値を伝えることができます。
ペット用品ECの薬機法違反事例と罰則

実際にあった違反事例
ペット用品における薬機法違反は、決して他人事ではありません。実際に摘発された事例を見ていきましょう。
事例1:ペット用サプリメントでの違反
あるEC事業者が、ペット用関節サプリメントの販売ページで「関節炎の痛みが和らぐ」「獣医師も推奨する治療効果」といった表現を使用。消費者庁から措置命令を受け、該当商品の販売停止と広告の改善を命じられました。
事例2:ペット用シャンプーでの違反
「アトピー性皮膚炎に効果的」「皮膚病の治療に」といった表現を使用したペット用シャンプーの販売業者が、薬機法違反で行政指導を受けました。商品パッケージの変更と、ECサイト上のすべての該当表現の削除が求められました。
事例3:SNS広告での違反
Instagram広告で「老犬の認知症予防に」という表現を使用したペット用サプリメントの販売業者が、薬機法違反として指導を受けました。SNS広告も薬機法の規制対象であることを認識していなかったケースです。
違反した場合の罰則
薬機法違反には、段階的な処分が用意されています。
行政指導
初期段階では、行政から改善指導が入ります。この時点で速やかに対応すれば、大きな問題にはなりません。しかし、指導を無視したり、改善が不十分な場合は、より重い処分へと進みます。
措置命令
行政指導に従わない場合、措置命令が発令されます。これには以下が含まれます:
- 違反広告の中止命令
- 違反内容の訂正広告の掲載命令
- 再発防止策の策定・報告義務
課徴金納付命令
2019年の薬機法改正により、課徴金制度が導入されました。違反行為による売上の4.5%を課徴金として納付しなければなりません。売上が大きい商品ほど、課徴金額も高額になります。
刑事罰
悪質な違反や繰り返しの違反に対しては、刑事罰が科される可能性があります:
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
- 法人の場合は最大1億円の罰金
違反による事業への影響
薬機法違反は、単なる罰則だけでなく、事業全体に大きな影響を及ぼします。
売上への直接的影響
- 違反商品の販売停止による売上減少
- 広告出稿の停止による新規顧客獲得の困難
- 課徴金による資金繰りの悪化
信用・ブランドイメージへの影響
- 消費者からの信頼失墜
- 取引先との関係悪化
- ネガティブな口コミの拡散
- 採用活動への悪影響
運営コストの増加
- 法務対応のための弁護士費用
- 広告・パッケージの修正費用
- 再発防止のための体制構築費用
特にEC事業の場合、一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。違反事例はインターネット上に長期間残り続けるため、将来的な事業展開にも影響を与える可能性があります。
予防的コンプライアンス体制の重要性
薬機法違反を未然に防ぐためには、予防的なコンプライアンス体制の構築が不可欠です。
社内チェック体制の構築
- 広告表現のダブルチェック体制
- 定期的な薬機法研修の実施
- チェックリストの作成と運用
- 違反事例の共有と学習
外部専門家の活用
- 薬機法に詳しい弁護士との顧問契約
- 広告表現の事前チェックサービスの利用
- 定期的な法務監査の実施
記録の保管
- 広告表現の変更履歴の記録
- チェック実施の証跡保管
- 外部専門家からの助言内容の記録
これらの体制を整えることで、万が一指摘を受けた場合でも、適切な注意義務を果たしていたことを示すことができます。
専門家チェックを受ける方法と費用感

薬機法チェックの専門家の種類
ペット用品ECの薬機法対策には、様々な専門家のサポートを受けることができます。それぞれの特徴と役割を理解して、適切に活用しましょう。
薬機法専門の弁護士
最も確実性の高いチェックを受けられるのが、薬機法を専門とする弁護士です。法的な観点から厳密なチェックを行い、リスクの高い表現を確実に指摘してもらえます。また、万が一トラブルが発生した際の対応も依頼できる点がメリットです。
薬事コンサルタント
薬機法に特化したコンサルティング会社も多数存在します。弁護士よりも費用を抑えられることが多く、実務的なアドバイスを受けられるのが特徴です。ただし、法的な最終判断は弁護士に確認することをおすすめします。
広告代理店の薬事チェックサービス
大手広告代理店では、薬事チェックサービスを提供しているところもあります。広告制作と同時にチェックを受けられるため、効率的に進められます。
認証機関のチェックサービス
JADMAやJCDSなど、通販業界の認証機関でも薬事チェックのガイドラインを提供しています。会員になることで、相談窓口を利用できる場合があります。
チェックサービスの費用相場
薬機法チェックの費用は、依頼する専門家やチェック内容によって大きく異なります。
単発チェックの費用相場
- LP1ページ:3万円~10万円
- 商品ページ1点:1万円~5万円
- チラシ・パンフレット:2万円~8万円
- 動画広告(3分以内):5万円~15万円
月額顧問契約の費用相場
- 小規模EC(月10商品以下):5万円~15万円/月
- 中規模EC(月30商品以下):15万円~30万円/月
- 大規模EC(月30商品以上):30万円~100万円/月
スポット相談の費用相場
- 電話相談(30分):1万円~3万円
- 対面相談(1時間):2万円~5万円
- メール相談(1案件):5千円~2万円
費用だけでなく、対応スピードや専門性、アフターフォローの充実度なども考慮して選択することが重要です。
効率的なチェック体制の構築
すべての広告物を外部チェックに出すとコストが膨大になってしまうため、効率的なチェック体制を構築することが重要です。
リスクレベルに応じた対応
1. 高リスク(新商品LP、大規模広告)→ 必ず専門家チェック
2. 中リスク(商品ページ更新、メルマガ)→ 社内チェック後、不安があれば専門家へ
3. 低リスク(SNS投稿、ブログ)→ 社内チェックで対応
社内チェックリストの作成
専門家のアドバイスをもとに、自社独自のチェックリストを作成しましょう。NGワード辞書やOK表現集を整備することで、日常的な更新作業の効率が大幅に向上します。
定期的な法改正情報の収集
薬機法や関連するガイドラインは定期的に改正されます。専門家との顧問契約や、業界団体への加入により、最新情報を確実にキャッチアップする体制を整えましょう。
チェックを依頼する際の注意点
専門家にチェックを依頼する際は、以下の点に注意しましょう。
明確な依頼内容の伝達
- チェック対象の範囲(LP、バナー、メルマガなど)
- 商品の詳細情報(成分、用途、ターゲットなど)
- 希望する訴求ポイント
- 納期と予算
チェック結果への対応
専門家から指摘を受けた箇所は、必ず修正しましょう。「この程度なら大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。また、修正後の最終確認も忘れずに依頼することが重要です。
継続的な関係構築
単発での依頼よりも、継続的な関係を築くことで、自社の商品特性を理解してもらい、より実践的なアドバイスを受けられるようになります。
薬機法対策は、コストではなく必要な投資と考えることが大切です。適切な専門家のサポートを受けることで、安心してEC事業を展開できる環境を整えましょう。
まとめ
ペット用品ECにおける薬機法対策は、事業を守るために欠かせない重要な取り組みです。本記事で解説した内容を振り返ると、薬機法違反のリスクは決して軽視できるものではありません。知らずに使ってしまったNGワードが、事業の存続を脅かす可能性もあるのです。
しかし、薬機法を正しく理解し、適切な対策を講じることで、法令を遵守しながらも効果的な商品訴求は十分可能です。成分や原材料の特徴を活かした訴求、使用感での差別化、ライフスタイル提案など、様々なアプローチで商品の魅力を伝えることができます。
重要なのは、予防的なコンプライアンス体制の構築です。社内でのチェック体制を整え、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、安心してEC事業を展開できます。コストはかかりますが、違反によるリスクと比較すれば、必要な投資といえるでしょう。
ペット用品EC事業を成功させるためには、売上向上の施策と同じくらい、薬機法対策にも真剣に取り組む必要があります。本記事を参考に、自社の広告表現を見直し、必要な対策を講じていただければ幸いです。
薬機法対策でお困りの際は、ぜひ専門家への相談をご検討ください。
私たちゼネラルアサヒでは、豊富な実績をもとに、EC事業者様の販売促進をサポートしています。安心・安全なEC運営のために、お気軽にご相談ください。
