「リスキリング」とは、ひと言でいうと「社会人における学び直し」のことです。いま国や経団連もリスキリング推進に向けた施策や提言を行うなど、リスキリングへの関心が高まっています。また一方で、学習動画を使った社員教育や資格取得支援を行う企業も増えており、リスキリングの学習手段として動画の活用も今後さらに進むものと考えられます。
今回は、リスキリングとは何か、企業のメリットや導入する際のポイントを中心に、リスキリングにおける動画学習の広がりやおすすめスキルを解説します。
また、独自の動画学習コンテンツをお考えの企業の方もぜひ参考にしてください。
■目次
リスキリングとは?
経済産業省では、リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
リスキリングは、個人でスキルアップを目指すというよりも、企業が主体となって取り組む人材戦略の一環という意味合いが強いです。
リスキリングによく似ている言葉に「リカレント教育」や「アップスキリング」という言葉もあります。
「リカレント教育」は、休職や退職で一旦職場を離れた上で、大学などの教育機関で再度教育を受けスキルを身につけることを指し、「アップスキリング」は、現在の職務を行う上で必要なスキルを身につけることを意味します。
よく似ていますが、リスキリングは企業が主導するものであり、従業員に対して現在の業務と並行しながら、異なる新たな分野の知識や技術を習得させることをいいます。
リスキリングが注目されている背景
では、なぜリスキリングの必要性が注目されているのでしょうか。
今、AIなどのデジタル技術の発展により、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。このような変化に適応し、生き残っていくために、国や多くの企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に力を入れています。DXに取り組むためには、デジタル関連の知識や技術を持った人材が必要不可欠です。このような背景から、近年、リスキリングはDXに取り組む企業のデジタル人材育成のひとつの手段として注目を集めているのです。
DX動画とは?成功に導く4つのポイントを解説!
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リスキリングに取り組むメリット
リスキリングはデジタル分野のスキルに限るものではありません。コロナ禍による働き方の多様化や人手不足など、企業はこれまでにない様々な課題を抱えています。急激に変化する社会の中で企業が成長を続けていくためには、DX人材はもとより、変化に適応できる人材の育成が重要です。リスキリングによって企業が必要とする人材を育成できれば、人材不足の解消、そして社会の変化に適応できる組織づくりにつながります。
国内外で先進的にリスキリングに取り組み、すでに成果を上げている企業もあります。リスキリングに取り組むメリットを具体的に挙げていきましょう。
業務効率化につながる
リスキリングによって得た知識やスキルを実務で活用することで、従来の業務フローが改善され、作業工数の削減、業務の効率化につながります。例えば、入力や集計などの業務にITを活用し自動化すれば、これまでその作業にかかっていた時間を本来の業務に割くことができます。既存事業の見直しや新規事業の立ち上げなど、より生産性の高い業務に注力することができます。
従業員のキャリアにプラスになる
リスキリングで新しいスキルを習得できた従業員は、社内におけるキャリアの選択肢も広がるでしょう。新たな分野や幅広い業務で活躍できる人材が増えるため、生産性の向上や業務の拡大につながり、企業にとっても大きなメリットとなります。身につけた新たなスキルを実務で発揮できれば、従業員の自信にもなり、仕事へのモチベーションも高まるでしょう。学ぶ機会を与えてくれた企業に対してもエンゲージメントが向上するなど、企業と従業員の双方にとってプラスに働くでしょう。
新しいアイデアが生まれやすくなる
従業員がこれまでの経験にプラスして新しい知識や技術を身につけることで、従前にはないアイデアが生まれやすくなります。デジタル時代の到来や産業構造の変化など、企業も変革が迫られる中、変化に適応できる人材やアイデアは不可欠です。従業員の新しいアイデアが活かされる仕組みづくり、また生み出しやすい空気を醸成しましょう。
採用コスト(新規雇用)を抑えられる
リスキリングは、企業が必要とする新たなスキルを既存の従業員に身につけてもらうものです。リスキリングしなければ、そのスキルを持った人材を新規採用しなければなりません。時に、必要とするほどの人材は希少で採用が難しかったり、採用コストがかかったりするものです。リスキリングによって社内で人材育成できれば採用に関わるコストを削減でき、また労働人口が減少する中にあっても、継続的にリスキリングを行うことで必要な人材を確保し続けることができるでしょう。
リスキリングに取り組む際のポイント
リスキリングは長期的な取り組みであり、継続的に実施していくことが重要です。単にスキルを習得して終わりではなく、スキルを習得した従業員がそのスキルを発揮し活躍することがリスキリングの成功となります。
以下に挙げるのは、成功に導くために、これだけは押さえておきたい3つのポイントです。
企業にとって必要な人材、スキルを明確にする
企業の事業内容や業績などによって、必要なスキルは異なるものです。まずは企業の現状や課題、いま従業員が持っているスキルを把握し、今後必要となる人材やスキルを洗い出していきます。
その際、いま持っているスキルと新たに必要なスキルについてのギャップを可視化(データベース化)できるようにしましょう。可視化することで、効率良く学習プログラムを策定でき、また全従業員の持つスキルや学習状況を管理しやすくなります。
従業員一人ひとりに合った学習プログラムを整備する
リスキリングは一部の従業員ではなく全従業員を対象に取り組むことが望ましいです。しかし、年代や経験年数、部署、またそれぞれのキャリア展望やいま保有しているスキルによって、必要となるスキルや習得する優先順位も変わってくるでしょう。そのため、従業員一人ひとりに合った学習プログラムを整備することが重要です。
すでにリスキリングに取り組んでいる国内外の大手企業をみると、自社で学習プラットフォームを開発している例も多くありますが、ゼロから立ち上げるにはコストも時間もかかります。外部の学習プラットフォームやeラーニング講座、社会人大学などを有効活用し、従業員それぞれが適した学習を選択できるように環境を整備しましょう。
習得したスキルを実践できる機会をつくる
リスキリングを行ったとしても、習得したスキルを実務で活用することができなければ意味がありません。新しいスキルを発揮できる部署への異動や新規プロジェクトへの参加など、実践の機会を用意しましょう。
リスキリングは、従業員に学習の負担やストレスを多少なりともかけてしまうものです。そのため、学習者本人のスキルを身につけたいという意欲が重要です。モチベーション維持のためにも、実践の機会をはじめ、資格取得や習熟度に応じた認定制度などの仕組みをつくり、継続して学習に取り組めるようにサポートしましょう。
リスキリングに役立つ動画学習サービス
近年、オンラインでの動画学習サービスが拡大しています。リスキリングにおける学習手段として利用する例も多く、リスキリングを効果的に実施するために外部の学習プラットフォームを活用するのもひとつの方法です。
ここでは、リスキリングに役立つオンライン動画学習サービスをご紹介します。
マナビDX
デジタル人材の育成を支援するために、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が開設したポータルサイト。デジタルスキルを身につけることができる学習コンテンツを紹介。有料の講座も含まれますが、受講費用等の補助が受けられる講座もあります。
https://manabi-dx.ipa.go.jp/
Udemy business(ベネッセコーポレーション)
米国Udemy社が運営し、日本国内における事業パートナーとしてベネッセが業務提携する法人向けオンライン学習プラットフォームで、厳選された約9,500講座を定額で学べる学習サービスです。学習進捗管理や学習データの抽出など法人専用の管理機能を備えています。
https://ufb.benesse.co.jp/
JMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)
大学や企業が提供する本格的なオンライン講義を、無料で受講できる学習サービス(一部有料オプションあり)。簡単な登録で誰でも受講することができ、修了条件を満たせば修了証の取得もできます。複数の講座配信プラットフォームをまとめるポータルサイトとなっており、JMOOCサイトからすべての講座を閲覧、検索、受講することができます。
https://www.jmooc.jp/
gacco(ドコモ)
NTTドコモグループのドコモgacco株式会社が運営する動画学習サービス。大学や企業が提供する講義をオンラインで無料で受講できます。個人向けと法人向けのサービスがあり、法人向け「gacco for Biz」では法人オリジナルの研修配信サービスや研修コンテンツを提供。学習管理機能を備え、企業の人材育成をサポートします。
https://gacco.co.jp/
動画学習サービスを利用する場合は、事業者が配信する動画コンテンツを受講するのが主ですが、自社のオリジナル教材を登録できる場合もあります。独自コンテンツを制作するにはコストや時間がかかるというデメリットはありますが、自社の知見やノウハウなどを内容に取り入れることができます。必要に応じて、自社独自の動画コンテンツの制作も検討してみましょう。
「【研修担当必見】オンデマンド研修のメリット・制作方法・事例を解説!」も参考に。
動画学習に適したスキル
前述の通り、リスキリングはデジタル分野に限るものではありません。例えば語学やマーケティングなど、企業、個人によって必要とするスキルはそれぞれです。様々な分野の中から、すぐにでも学ぶべき動画学習に適したスキルをピックアップします。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
DXは既存のあらゆる業務の中でデジタル化できるものを洗い出し、業務内容を見直し、組織を変革していくものです。対象は全部署にわたるため、デジタル関連の部署や一部の従業員だけを対象とするのではなく、全従業員に対して行うのが望ましいです。「DXがなぜ必要なのか」という目的から学べる動画も多いので、まずはDX参画への意識を高めることから始めましょう。
「DX動画とは?成功に導く4つのポイントを解説!」も参考にご覧ください。
プレゼンテーション
企画書やプレゼンテーション資料の作り方をはじめ、相手に伝わる話し方や身振り、手振りなど、動画だからこそ分かりやすく学べるのがプレゼンテーションスキルです。コミュニケーション能力の向上にもつながるので、社内での業務や人間関係の円滑化、またビジネス以外でも役立つ汎用性の高いスキルです。
デジタルツール
デジタルツールとは、デジタル技術によって業務を効率化するソフトやサービスのことです。クラウドシステムや管理(マネジメント)システム、Web会議ツール、データ分析ツールなど様々あります。動画教材なら、実際の画面の動きや操作を見ながら学べるので分かりやすく、デジタルツールと聞くだけで難しそうと感じ、敬遠してしまう人ほど動画学習がおすすめです。DXへの入口として、まず始めてみるのもいいでしょう。
動画編集
社内研修や営業・販促活動での利用や、SNS、YouTubeへの投稿など、ビジネスでも動画が活用されるシーンが増えてきました。動画制作を内製化できれば、必要なときにすぐに作ってすぐに公開とスピードアップが期待できるほか、コスト削減にもつながります。
動画教材は最新の情報に更新しやすいため、最新の動画編集ソフトや流行のテクニックなどを学ぶには動画での学習がおすすめです。
マーケティング
ビジネスの基礎となるマーケティングは、マーケティングを担当する部署に限らず、従業員に広く身につけてほしいスキル。特にWebマーケティングやデジタルマーケティングは、デジタル時代に適応するスキルとして、リスキリングにおすすめです。最新の動向やトレンドと密接に関係するスキルなので、情報が更新されやすい動画学習に適しています。
まとめ
今回は、企業の人材育成として今注目が高まっているリスキリングについて解説しました。
デジタル技術の発展、働き方の多様化、人材不足など、急激に変化する社会の中で企業が生き残っていくためには、変化に適応できる人材の育成が重要です。
リスキリングを成功させるためには、企業にとって必要なスキルを明確にすること、効率よくスキルを習得できる学習プログラムを策定すること、従業員が自発的に学ぼうとする仕組みや空気をつくることなどが挙げられます。
リスキリングの方法は様々ありますが、動画学習コンテンツの活用は今後さらに進むものと考えられます。リスキリングに適したオンライン動画学習サービスも拡大しており、学習者は膨大に用意された動画コンテンツの中から学びたいものをスキマ時間に学ぶことができます。
企業にとっても外部の学習プラットフォームを活用することで、従業員のスキルの可視化、一人ひとりに合った学習プログラムの整備、学習状況の管理などをスムーズに行うことができます。
動画コンテンツはデジタル分野に必要なスキルと親和性が高く、情報更新もしやすいので最新の知識やツールに触れることができます。外部の動画コンテンツを活用しつつ、オリジナルの動画学習コンテンツの制作を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。