3DCGは仮想のものを非常にリアルな立体感のある造形として作ることができますが、いったいどのようなものなのかご存知ですか?今では映画やゲームで洗練されたCG映像を見る機会も多いと思いますが、実際にはそれがどのようなものなのかよくわからない方や、3DCGの制作スキルを習得したいと考えている方の中にも難しそうだなぁと感じている方も多いのではないでしょうか。今回は3DCGの役に立つ情報と制作スキルの学習方法や制作ソフトの選び方のポイントをわかりやすくご紹介します。
■目次
3DCGとは?
3DCG(3Dimensional Computer Graphics)」とは、主に仮想の三次元空間におけるコンピュータグラフィックスのことを指します。現在では映画やゲーム、アニメなどの映像分野だけではなく、さまざまな業界で活用されています。「3DCGの作り方7ステップやソフト3選を詳しく解説。CGの世界を知る第一歩!」の記事もあわせて参考にしてください。
3DCGの歩み
3DCGの黎明期は、博覧会の展示映像などで分子構造の可視化やコンピュータの演算による数理的な造形物が増殖するようなアニメーションなどの表現でした。それからデスクトップ・ワークステーション(コンピュータ)の高性能化と共に制作ソフトの進化によって3DCGの表現が飛躍して、一般的に有名になったのは1995年公開の映画「トイ・ストーリー」でしょう。同じ頃に家庭用ゲーム機のソニー「PlayStation」とセガ「SEGASATURN」が発売されて3DCGゲーム「バーチャファイター」が登場しました。これ以降は3DCG=キャラクターCGというイメージができたといえるでしょう。
クリエイティブな映像系で注目される3DCGですが、工業デザインでも活躍しています。家具などのインテリア・デザインや車などのプロダクト・デザインにおいても、3DCGを使って精巧に「三次元オブジェクト」を再現することで、デザインや色のシミュレーションが可能になりました。今後ますます3DCGの制作スキルは多くの業界で求められるでしょう。
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メタバースの可能性と3DCGの役割
最近になって「メタバース(metaverse)」という言葉をよく耳にするようになりました。メタバースとは現実社会とは異なる社会性を備えた仮想空間(主に3D空間)のことを指します。そしてメタバースの世界の中にはアバターと呼ばれるユーザー自身の分身が存在します。現実社会と同様にコミュニケーションが可能な世界であるため、メタバースは今後、次世代のSNSになるともいわれています。
メタバースの世界は主に3DCGで構築されていきます。ゲームの分野ではすでにメタバース的な3DCGによる仮想世界が取り入れられ、ユーザーがアバターとなって相互にコミュニケーションを図っています。
メタバース活用の代表例として、バーチャルシティ「バーチャル渋谷」があります。バーチャル渋谷では現実の渋谷で展示しているアート作品をメタバース空間でも鑑賞したり、バーチャル渋谷でのイベントに参加するといった楽しみ方ができます。最近では入社式、展示会、即売会などメタバース空間で開催されたという事例が増えてきています。今後はさらに現実社会と同じようにメタバースでの新しいビジネスが次々に生まれてくると考えられ、その仮想世界の表現に3DCGは不可欠なものになるでしょう。
3DCG制作の費用感、相場はどのくらい?
3DCGを制作する場合、自分で制作スキルを習得するのが理想的ですが、CG制作会社に3DCGの制作を依頼する場合は、一般のインテリア程度の簡単なモノでも1つの形状あたり数万円〜10万円程度の費用がかかります。精巧な機械やキャラクターになると1形状あたり十数万円〜50万円程度、またそれ以上の費用が発生する場合もあります。日本にとどまらず、今では世界中にCGクリエイターがいるので、海外では日本の相場より安い費用で制作できる可能性もあります。しかし作品のクオリティは時間と費用に比例しますので、安く制作できればいいというものではないのかもしれません。
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3DCG制作スキルの習得法
3DCG制作のスキルは今後ますます人気が高まることが予想されるので、習得したい方も多いかと思います。ここでは3DCG制作を学習するための主な3つの方法をご紹介します。
独学で習得する
あまりお金はかけられないが時間はあるという方には自分のペースで集中して学べる方法です。書籍とあわせてインターネット上にはチュートリアル動画やHOWTO、Q&Aなどの情報もあるので、自己管理や進捗管理ができるのであれば、好きな時に好きなだけ学ぶことが可能です。ただし独学では上級者に助言をもらったり、クオリティをチェックしてもらうことができないので、コンテストに応募するなど、何かのフィードバックを受ける機会を作るようにすると良いでしょう。
専門学校に通って履修する
効率的に学習したい、お金がかかっても誰かに教えてもらいたいという方は専門学校に通うのが良いでしょう。学校に通い、カリキュラムに沿って学習を進めればスキルの習得状況も管理しやすく、勉強環境も整っているのでモチベーションを維持しやすいと思います。3DCG全般の知識や技術について直接プロの講師に聞くことができるのも魅力です。学校によっては就職の情報提供やサポートがあり、3DCG業界で仕事に就きたい人に最適といえるでしょう。注意する点として、決まった時間に通う必要があるので時間の確保と自分の好きなことを詳しく習得しにくいことが考えられます。
オンライン講座を受講する
最近ではオンライン講座もあり、希望の制作ソフトについて好きな講師に好きな講座だけ受講する方法もできるようになりました。専門学校と違い、自分の目標に合わせて、好きな時間に特定の分野に集中して効率的に学習することができます。3DCGのどんな専門職に進みたいか決めている人に適しています。ただし、必要な機材や環境は自分で整えなければなりません。
3DCG制作ソフトの選び方
3DCGを制作するには専門のソフトが必要です。今では無料から有料のもの、サブスクリプションのものまで登場しています。どのようにして選べば良いのかわからない方も多いでしょう。初心者の方に確認してもらいたい選び方のポイントをご紹介します。
目的から制作ソフトを選ぶ
まずは3DCGソフトでどういうものを作りたいのか、目的を確認してみましょう。ゲームやアニメのキャラクターを作りたい、建築物を設計したい、車や家具をデザインしたいなど、やりたいことによって最適なソフトはどれなのか調べるといいでしょう。どちらかといえば、人間のような動きの3Dキャラクターのアニメーションに適した「Maya」、正確なスケールが必要な建築系のモデリングに適した「3ds Max」など、目的に応じて適したソフトがあります。
予算とライセンスタイプから選ぶ
無料でインストールできる「Blender」は有料のソフトに負けないほど機能が充実していて、初心者からプロレベルのCGまで制作することができます。「Maya」は世界のプロが使うほど機能性が高いですが高額なライセンス料が必要です。しかし機能を制限した廉価版の「MAYA LT」もあります。また「Maya」「3ds Max」には無償学生版やリーズナブルなIndie版も登場しています。購入には利用できる条件があるので自分に合うかどうかしっかりチェックして選ぶようにしましょう。
体験版を試用してから選ぶ
3DCGソフトのほとんどには無償体験版が用意されています。機材やソフトはかなり高額な費用がかかりますので、長く利用することを考えると体験版を使ってみることは必須です。チュートリアル動画を見ながら実際に制作してみるのも良いでしょう。モデリングは好きだけどレンダリングは思い通りにできないなど、評判が良くても実際使ってみると自分には使いにくい可能性もあります。試用期間を納得するまで使ってみて自分の好みにあったものを選ぶようにしましょう。
パソコンは何を基準に選べば良いの?
3DCGを制作するには高性能のパソコンの方が良いです。一般のデスクトップ・コンピュータではパワーが足りないので、CPU、メモリ、グラフィックボードなどの性能が高いデスクトップ・ワークステーションと呼ばれるマシンをおすすめします。
CPUでは、インテル製であればXeonシリーズ系以上の処理能力の高いCPUを搭載するものを選びましょう。また3DCG制作には画像処理性能も重要です。それを担うのがGPUです。GPUでは、NVIDIA社のGeForceやQuadroシリーズ系以上の描画速度の速いものを選ぶと良いでしょう。メモリは予算内で可能な限り多く搭載するのがおすすめです。最低でも16GB、余裕があれば64GBほしいところです。また、ハードディスクの容量は500GB以上、1TB以上あると余裕ができます。可能であればSSDとHDDの2台構成にするのが望ましいでしょう。それでも、スキルが上がってくると物足りなくなってしまいます。
さまざまな業界で3DCGが利用されている
3DCGがアニメやゲーム業界で使われていることは多くの方が知っていると思いますが、他のさまざまな業界でも3DCGを活用する企業が増えています。
映画はCGによって、もはや表現できないものはなくなった
3DCGの代表的な活用事例は映画制作です。3DCGを活用することで実写では表現できないような演出をすることが可能となります。特にSF映画で用いられることが多く、代表的なものとして「ジュラシック・パーク」や「スターウォーズ」「マトリックス」などが挙げられます。実写で撮影するとセット(背景)を作るのにコストがかかってしまうような演出も、3DCGで代用することによって非現実的な世界ですらフォトリアルに、かつ予算をコントロールしながら制作することが可能になります。現在ではジャンルを問わず、幅広い映画で3DCGが当たり前に取り入れられています。
製品の試作品を作らずにデザインを検討する
自動車をはじめ家電製品や家具、文房具まで、製品のデザインを検討するには従来では試作品を実際に作って比較していました。しかし、今では3DCGを使ってデザインすることでさまざまなライティングの下であらゆる方向から見ることができるようになり、実際に試作をしなくても色や素材のシミュレーションを繰り返すことが可能になりました。例えば車のデザインを検討する場合、実際の街並みを走らせたらどんなイメージになるか、3DCGで作った車を走らせてみるなどの表現も可能になっています。
洋服のデザインでもCGで試着のシミュレーション
アパレル業界でも洋服をデザインする際に、3DCGで仮想の洋服を作り上げてアバターに試着させることもできます。歩いた時の生地の動きをシミュレーションしたり、生地にテクスチャを貼り付けて柄合わせやカラーバリエーションを展開したり、最終的にレンダリングして高精細画像を出力することまでできるようになっています。布シミュレーションの精度が高くなり、服を重ね着した時のなびく表現や、生地を破くような表現も可能になりました。将来、メタバースのような仮想空間で3Dファッションショーの開催も増えていくでしょう。
参考:https://www.vogue.co.jp/fashion/article/us-vogue-metaverse-fashion-week-experience
実際の工場と同じことをデジタルで再現する
製造業では、現実の工場と全く同じことを3DCGの仮想空間で再現することが可能になってきました。デジタル世界でシミュレーションを行う「デジタルツイン」の活用です。「デジタルツイン」とは、工場ロボットなどの現実世界の情報をデジタル化し、仮想空間上に現実世界のコピーを再現する技術のことです。仮想空間で3DCGを使って再現された生産現場や設備の状態を、実際に生産に入る前にテストして予測することで、安全性を高め事前に起こりうるリスクを軽減できます。また、事故や災害を想定してどういう対策を取ればいいか判断することもできます。遠隔での設備監視の実現や熟練工の作業データによる作業員の教育、センサーを導入した保全コストの削減やスマート保安の実現など、デジタルツインの活用が進んでいます。
まとめ
今後ますます活躍の場が広がるであろう3DCGについて知っておくと役に立つ情報や、制作に携わりたい方にスキルの習得法、制作ソフトやコンピュータの選び方を解説しました。また3DCGを取り入れた業界の最新事例をご紹介しました。今や「VR(仮想現実)」ではゲームやエンターテインメントをはじめさまざまな分野で3DCGを活用した取り組みが進んでいます。興味のある方はさらに詳しく学んでみてはいかがでしょう。まずは無料体験版を利用してみると、より身近に理解が深まるかもしれません。
3DCGはコストや時間に加えて高度な専門技術が必要となります。弊社では、各種プロダクト系、建築系、技術系CGをはじめ、さまざまな3DCG制作を承っております。
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