
文字やイラスト、画像などに動きをつけるモーショングラフィックス。
図表やグラフ、ロゴやイラストを音楽やナレーションのリズムに合わせて動かすことで情報をわかりやすく伝えます。動画を作る時に、積極的に取り入れたい手法です。
この記事では、モーショングラフィックスを導入するメリットや動きの種類、制作のポイントなどをご紹介します。
■目次
モーショングラフィックスとは

モーショングラフィックスとは、もとは動きのない文字や画像、ロゴなどを加工して動きを加え、伝えたいことをより正確にわかりやすく表現する手法です。アニメーションを含めた「動き」には人を視覚的に引きつける効果があるため、近年は広告やマーケティングにも用いられています。
モーショングラフィックスの手法は、実は100年以上の歴史があります。最新のデジタル機器の進歩によって表現の幅が広がったため需要は急増しており、今後も広い分野で活用されると考えられています。
モーショングラフィックスを導入するメリット

文字やロゴといったデザインも、ただ「動く」だけでさまざまな効果が得られます。ただ、普段からよく目にしているため、効果についてあまり詳しく考えたことはないかもしれません。
そこで、モーショングラフィックスを導入するとどのようなメリットが得られるかを確認していきます。
目にとまるインパクトのある動画になる
モーショングラフィックスを用いる動画では、使われている文字数は少なく、シンプルに表現されています。しかも躍動的な動きを見せるため、見る人には高いインパクトを与え、非常に印象的です。色合いや動きの表現に限界がある実写では諦めざるを得ない表現も、モーショングラフィックスであれば容易に表現できます。
モーショングラフィックスは、印象づけたい部分を強調する方法としても効果的です。ただ色や太さ、大きさで表現するより、よりインパクトのある印象を残しやすいでしょう。
情報を分かりやすく伝えられる
「百聞は一見にしかず」といわれるように、膨大な言語情報も視覚情報なら一瞬で、しかもより正確に、分かりやすく伝えられます。そのためモーショングラフィックスは、短時間で伝える広告や、一瞬でのイメージづけを求められるロゴなどに適しています。
モーショングラフィックスでは、余計な情報を排除し、伝えたい要点だけを伝えられます。「動き」は思わず目で追いたくなる要素であるため、最後まで見てもらいやすい手法ともいえるでしょう。
幅広い表現ができる
文字や画像、ロゴでは、大きさ・配色・書体といった固定的な要素で印象が決まります。しかしこれに動きが加わるモーショングラフィックスでは、表現の幅が格段に広がり、与える印象をコントロールすることも可能です。
印象づけたい文字だけを点滅・回転させたり、逆に周りを激しく動かして、対象物が「動かない」ことで印象づけたりと、自在に表現できます。声や音楽といった「音」が加えられる点も、モーショングラフィックスの特徴です。見る人の気持ちを引きつけるような、文字だけでは思いもよらない印象を与えられます。
少ないコストで制作できる
モーショングラフィックスには、他の動画コンテンツと比べ、比較的少ないコストで制作がスタートできるというメリットがあります。モーショングラフィックスはもとからある素材を活用することが多く、新たに撮影したり編集したりする手間があまりかからないためです。
市販の映像編集ソフトがあれば独学でも作成できる点も、モーショングラフィックスのメリットといえます。映像編集ソフトは有料、無料を合わせると種類が豊富です。自分に合ったものを使えば、より早くオリジナリティのある表現を作り上げることができるでしょう。
モーショングラフィックスの動きの種類

モーショングラフィックスは、既存のデザインに取り入れることでさまざまなメリットを期待できます。しかし、活用している企業はそう多くはないのが現状です。
ここでは、実際に取り入れるときにイメージしやすいよう、モーショングラフィックスにある代表的な動きの種類を4つみていきましょう。
アニメーションロゴ:ロゴに動きをつける
アニメーションロゴは、本来、静止画像としてのロゴに意外な動きなどの変化を加えたものです。ただ移動するだけでなく、一部分の拡大・縮小やひねり、ゆがみなどの動きが可能で、ロゴがまるで生き物のように表現することができます。
アニメーションの動きによっては、可愛らしさや力強さなどの表現もできます。さまざまなブランドに取り入れられている、今や代表的なモーショングラフィックスの1つといえるでしょう。
リキッドモーション:流れるような動きを出す
リキッドモーションは、「液体」のようになめらかな表現方法を用いるモーショングラフィックスです。機械的な動きになりやすい従来のアニメーションとは違い、自然な印象を与えられます。
ゆっくりとした動きから素早い動きまで、また、ごく粗いものから繊細なテクスチャのものまで、表現に合わせて調整できるのもメリットです。
モーフィング:物体を変形させる
モーフィングとは、物体があるイメージから異なるイメージへ、変形する過程を表現するモーショングラフィックスです。
この技術が知名度を上げたのは、1991年の映画「ターミネーター2」です。敵役の描写にこの技術が使用されて話題になりました。記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
このように、モーフィングは見る人の注意を強く惹きつける効果が期待できます。WEBサイトのキャラクターやロゴなどに最適です。
キネティックタイポグラフィ:文字を加工する
キネティックタイポグラフィとは、単語や文章をアニメーションのように動かすモーショングラフィックスのことです。本来であれば読みやすさが求められる文章を、伸縮させたりねじったりすることで、メッセージをより印象的に表現できます。
キネティックタイポグラフィは、単調になりがちなプレゼンテーションで特定のキーワードやコピーに用いると効果的です。
モーショングラフィックスをワンランクアップさせる表現

動画にモーショングラフィックスを取り入れれば、見る人の注目度はアップするでしょう。しかしさらに効果を上げたい時は、別の手法を加える必要があります。
ここではモーショングラフィックスの効果を、もうワンランクアップさせられる代表的な表現をみていきましょう。
3Dと2Dのミックス
平面的な2Dでは表現できなかったアニメーションも、3Dであれば実現できる場合があります。プロモーション動画などでは、2Dアニメーションに3Dキャラクターなどを組み合わせ、立体的な印象を与える表現も増えてきました。うまくミックスできると、アニメーションの流れにコントラストが生まれ、より複雑な表現も可能になります。
3Dと2Dのミックスには、より手間のかかる3D表現を2Dに差し替えることで制作コストの軽減というメリットもあります。
線のアニメーション
線を使ったアニメーションもよく用いられています。このようなアニメーションのメリットは、以下のとおりです。
- チャートやグラフを描く:データの変化が分かりやすい
- イラストが描き上がるまで:何が描き上がるのか興味を持つため見入ってしまう
線を用いるアニメーションは、スタイリッシュな印象を与えやすく、より細やかな表現にも適しています。プロモーションや説明のための動画を、よりユニークに仕上げてくれるでしょう。
インフォグラフィック
伝えたい内容を文字ではなくアイコンやイラストなど視覚的に伝えるインフォグラフィックは、複雑なデータや統計の説明に適しています。ごくシンプルな内容でも、文化や言葉の異なる人々に伝える場合は、文字よりもインフォグラフィックを用いた方がより正確に伝わりやすいでしょう。
例えば棒グラフで、年を追うごとに人口が増えていることを伝えたい場合は、軸線だけでなく、人間のイラストがどんどん増えていくことで、値が高くなっていく様子を表現できます。人間のイラストが密集していくアニメーションにすれば、より強く印象づけることも可能です。
モーショングラフィックス制作のポイント

映像制作でモーショングラフィックスを取り入れる時は、3つのポイントを押さえる必要があります。
- シンプルで分かりやすく
- ストーリー性(メッセージ性)を考える
- 強調(アピール)する点を明確にしておく
より効果的に作り上げるために、それぞれを1つずつ詳しくみていきましょう。
シンプルで分かりやすく
モーショングラフィックスは、見る人に強い印象を与える手法です。しかしポイントがいくつもあると、見逃したり忘れたりしてしまう可能性があります。より的確に印象づけるには、ポイントを絞り、できるだけシンプルに分かりやすく構成することが大切です。
デザイン性やアート性を優先するあまり、動きが激しすぎたり色を多用しすぎたりすると、見る人の視点が定まらなくなります。結果として、目的の訴求ポイントが伝わらなくなってしまいます。
モーショングラフィックスは、次々とイメージとメッセージが「移りゆく」表現方法です。見る人に分かりやすくするためにも配慮する必要があります。
ストーリー性(メッセージ性)を考える
モーショングラフィックスでは、文字だけでは十分に表現できないことを瞬時に分かりやすく表現することが可能です。特に伝えたい内容が多い場合は、動画全体にストーリー性を持たせ内容を一連の流れとして制作するとよいでしょう。見終わった後で一つひとつの内容をストーリーとして理解しやすく、見た人は記憶しやすくなります。
また動画を、ストーリーやメッセージに沿ったイメージにすることも重要です。イメージが違ってしまうと、誤ったメッセージが伝わってしまう可能性もあります。
強調(アピール)する点を明確にしておく
映像制作では、あまり多くのことを盛り込みすぎると、何を伝えたかったのかが曖昧になったり変わったりしてしまいます。そのため、強調(アピール)する点を絞り込み、明確にしておくことが大切です。
強調する点が少ないほど、見る人に伝わりやすくなります。メッセージをしっかり伝えるには、分かりやすく表現されたモーショングラフィックスだけでも十分です。
モーショングラフィックスを活用できるもの

モーショングラフィックスの効果をより深く把握するには、いま用いられている媒体を知るのが効果的です。
ここでは、実際にモーショングラフィックスが使われている媒体を解説します。
企業のロゴ
多くの企業やブランドのロゴ、グリーティングのタイポグラフィには、モーショングラフィックスが用いられています。特にロゴは、見る人に強く印象づけられる顔といえるでしょう。より細やかなモーショングラフィックスを作成すれば、自社の価値観を効果的に伝えることができます。
近年は、高画質で耐久性の高いモニターが比較的安価になったこともあり、公共交通機関やビルなど街中のさまざまな場所に動画広告が出せるようになりました。企業は伝えたいことをより細やかに、正確に伝えやすくなったといえます。
タイトルやキャッチコピー
モーショングラフィックスは視覚的に印象づける手法のため、映画やテレビといった映像コンテンツとは高い親和性があります。オープニングタイトルやエンディングクレジットで、デザインされた文字にモーショングラフィックスを用いれば、見る人の興味は十分に惹きつけられるでしょう。
文字のアニメーションは、特に効果的です。
教材
教育分野では、印象やイメージでの理解が必要な内容を伝えるために、モーショングラフィックスが利用できます。
例えば数学の図形問題や物理の証明問題では、用語や式では伝えづらい内容も多いです。モーショングラフィックスを活用すれば、正しく分かりやすく伝えることができます。
教育の現場は、今や1人1台端末を使って授業を受ける時代です。モーショングラフィックスが使われたコンテンツを、個別に何度も見て学ぶスタイルが一般的になるかもしれません。
WebサイトやSNS
WebサイトやSNSでは、より短い時間で効果的にメッセージを伝える必要があります。そのため、モーショングラフィックスにはうってつけの活用場面といえるでしょう。
作品や製品の紹介にも、モーショングラフィックスは有効です。アニメーションやキネティックタイポグラフィを用いることで、シンプルに分かりやすく伝えることができます。
広告・プロモーションビデオ
モーショングラフィックスは、商品・サービスの魅力やメリットを正確に伝える手法として活用できます。作り方次第で、決められた時間内でより正確に、魅力的に伝えることが可能です。
映像が与える印象は、そのままブランドとしてのイメージにもつながります。商品全体をより印象づけることもでき、ブランドイメージの向上も期待できるでしょう。
まとめ
本記事ではモーショングラフィックスの基礎情報、効果的な活用方法などを紹介しました。情報を分かりやすく伝え、視覚的に印象づけられる手法として、幅広い分野で使われている技術です。
動画制作においてハイクオリティを目指すのであれば、ぜひとも使いこなしたい技術の一つです。モーショングラフィックスは独学でも習得することもできますが、制作会社への依頼はその技術力だけでなく企画から動画制作・編集まで一気通貫で専門スタッフが丁寧に対応してくれる点にあります。
動画はターゲットの設定からストーリー性まで、視聴者を飽きさせないことが重要になってきます。効果的な動画を制作したいとお悩みの方は、企画提案から制作まで実績が豊富な当社にお気軽にご相談ください。