COLUMNコラム

バーチャルプロダクションとは?メリットや活用事例、展望を解説!

公開日: 2023年6月22日    

バーチャルプロダクションとは、映像制作において最近注目されている手法です。背景に映し出した映像のもとで被写体を撮影し、現実とバーチャルをリアルタイムで自然に合成できます。本記事では、バーチャルプロダクションの魅力や活用事例、今後期待される可能性を解説します。

バーチャルプロダクションとは?

バーチャルプロダクションとは、セットの背景に映像を映し出し、被写体と組み合わせてリアルタイムで映像制作を行う技術のことです。例えば、3DCGのバーチャル背景を投影したスクリーンを用いて撮影することで、従来の合成技術と異なった現実と仮想をその場で融合することができます。
バーチャルプロダクションは新たな可能性を広げる撮影技術といえるでしょう。

バーチャルプロダクションの定義

デロイトトーマツによると、バーチャルプロダクションの定義は、「バーチャル空間を活用したリアルタイム映像制作を行う新たなプロダクションワークフローの総称」です。バーチャルプロダクションには、次に紹介するように複数の種類があり、厳密にはその総称をバーチャルプロダクションと呼びます。しかし実際に「バーチャルプロダクション」という際は、バーチャルプロダクションの一種である、「LEDディスプレイベース」のことを指すケースが一般的で、LEDディスプレイベースはバーチャルプロダクションの中でも広く活用されています。

出典:デロイトトーマツ「【解説】バーチャルプロダクションとは?」

バーチャルプロダクションの種類

バーチャルプロダクションには、以下のようにさまざまな種類があります。

  • グリーンスクリーンベース:グリーンバックを利用する
  •  LEDディスプレイベース:LEDスクリーンを利用する
  • パフォーマンスキャプチャベース:被写体の表情や動きをセンサーでキャプチャし、バーチャル空間上のアニメーションに反映させる
  • バーチャルカメラベース:バーチャル空間上のカメラや物理的に存在するカメラ、VRヘッドセットなどを用いてバーチャル世界を撮影する

特に注目されているのが、LEDスクリーンを用いて撮影するLEDディスプレイベースです。カメラの位置や方向に合わせてバーチャル背景を表示させ、被写体と背景を同時に撮影するインカメラVFXという手法を用いることで、カメラ内で最終的な合成映像を制作できます。リアルとバーチャルを非常に自然に融合できる手法です。

バーチャルプロダクションが魅力的な理由

3DCG背景とのリアルタイム合成が可能

バーチャルプロダクションの大きな特長は、3DCG背景とリアルタイムで合成できる点です。
従来の合成では、被写体を撮影した後からCGで制作した映像を重ねて編集していました。しかし、バーチャルプロダクションでは、被写体の背景に設置したスクリーンに3DCGで作成したバーチャル背景を投影して撮影します。LEDディスプレイベースの場合、カメラトラッカーが送るさまざまな情報を基に、レンダリングエンジンでリアルタイムに背景を生成し、違和感のない自然な映像を投影する仕組みです。そのため、リアルタイムで自然な合成映像を実現できるのです。

多種多様なデザイン性の高い3DCG背景

高度な3DCG技術を用いて背景を造形・編集することで、デザイン性が高くバリエーションも豊富な背景を創り出します。ジャングルの中や海底、宇宙など、さまざまな世界を生み出すことができるため、映像の可能性も広がるでしょう。背景と自然に合成でき、まるで現実にある世界で撮影したかのような自然な仕上がりになるのもメリットです。

撮影が困難な場所を容易に再現して撮影

バーチャルプロダクションを利用することで、わざわざロケ地に出向かずとも、スタジオ内で撮影が完結します。そのため、アクセスの悪い場所や近寄れないエリア、撮影許可を得るのが難しい私有地など、ハードルの高いロケ撮影でも容易に再現して撮影できます。

時間や天候の影響も受けないため、「夕焼けをバックに撮影したい」「晴天で撮影したい」などのニーズにも、柔軟に対応できます。

撮影コストの効率化

スタジオで撮影が完結するバーチャルプロダクションなら、撮影に出向くための移動費や宿泊費用、ロケ地を使用するための使用料などを削減できます。イメージに合うロケ地を探す手間も省けるため、コストを抑えて効率的に撮影できるのが魅力です。また、後から合成する必要がないため、撮影後の編集作業にかかるコストも削減できます。

バーチャルプロダクションの活用事例

バーチャルプロダクションは、ドラマ制作で用いられたことで注目を浴びるようになりました。そこから、ライブ配信やCM、MV制作など、あらゆる場面で活用されるようになり、映像表現に新たな可能性を生み出しました。

ライブ配信

バーチャルプロダクションを用いて、新たなライブ配信を実現する試みが行われています。

ソニーグループが運営する「Ginza Sony Park」とヒップホップ・ユニット「Creepy Nuts」は、バーチャルプロダクションを用いてライブ配信イベントを開催しました。ニッポン放送の駐車場で実施されているように見えますが、実はバーチャル背景であり、配信しているのはソニーのスタジオ内です。その後、曲に合わせてバーチャル背景を投影し、現実の物理世界とバーチャルの世界を行き来する、新感覚のライブ配信となりました。

参考:PR TIMES「現実の物理世界なのか、バーチャルなのか!? Creepy NutsとGinza Sony Parkが実験的なライブ配信を開催」

参考:YouTube「Creepy Nuts、ニッポン放送駐車場でライブ!?バーチャルプロダクション技術を駆使したライブ開催」

映画・ドラマ制作

さまざまな映画・ドラマ作品に、バーチャルプロダクションが活用されています。その先駆けとなった事例が、2019年に公開された、ドラマシリーズ「マンダロリアン」です。

「マンダロリアン」シーズン1では、撮影の半数以上にバーチャルプロダクションが活用されました。高さ20フィートほどの巨大な LEDディスプレイにバーチャル背景を投影し、ロケ撮影をせずに迫力のある映像に仕上げています。

参考:YouTube「The Virtual Production of The Mandalorian Season One」

CMやMV制作

CMやMV制作でバーチャルプロダクションを用いることで、独特の世界観を演出できます。

CM制作における活用事例として挙げられるのが、アパレルを中心に複数の事業を展開するベイクルーズ社です。EC販促を目的に作成したCMでバーチャルプロダクションを活用し、まるで複数の国で撮影したかのような映像を、スタジオ撮影のみで作り上げました。一見大規模なロケが必要な映像を、コストを抑えて制作した事例です。

MV制作における活用事例として挙げられるのが、シンガーソングライターとして活躍するVaundy氏の楽曲「泣き地蔵」のMVです。実際には撮影が困難なシーンでバーチャル背景を用い、自然に合成することで、リアルの限界を超越しながらも、限りなくリアルに近い表現を可能にしています。メッセージ性の強い楽曲とマッチしたMVに仕上がっているのです。

参考:YouTube「【BAYCREW’S STORE】2021SS WEBCM 「woman insight joy編」」

参考:YouTube「泣き地蔵 / Vaundy:MUSIC VIDEO」

これからの展望

最後に、バーチャルプロダクションのさらなる可能性や展望について解説します。

バーチャルプロダクションの市場規模は成長を遂げており、2022年1月にREPORTOCEANが発表したレポートでは、2020年に約14.5億米ドルであった市場規模は、2027年には40.5億米ドルまで拡大すると予想されているほどです。

バーチャルプロダクションは、映画や音楽といったエンターテインメント業界だけでなく、企業のセミナーや株主総会、コマーシャルなど、さまざまな場面で活用されることが期待されています。

参考:PRTIMES「バーチャルプロダクションの世界市場は2027年まで年平均成長率15.8%で成長する見込み」

3DCGとの関係

バーチャルプロダクションにおいて重要なのが、3DCGです。特にハリウッド映画の撮影では、CGと映像を組み合わせることが当たり前になっています。

従来、CGはイチから作るものでしたが、最近では「撮って作る」ものになってきています。現地の空間を3Dスキャンし、画像データと点群データを組み合わせることで、スピーディかつ低コストで3DCGの背景を制作できるようになりました。

撮影スタイルも変化しています。従来は、事前に用意した絵コンテを基にスタジオですべての撮影を行い、撮影後にエフェクトを加えていました。撮影中はどのようなCGが加わるのか分からず、編集中にイメージどおりの完成形にならない場合は、再度そのシーンを撮り直す必要がありました。

バーチャルプロダクションでは、撮影しながら、CGのイメージを掴むことができます。そのため制作チーム全員で完成形を共有でき、イメージどおりの映像を撮影しやすくなりました。もし撮り直しになっても、スタジオ内で簡単に撮影できます。このように、従来の撮影方法に比べて、撮り直しの時間やコストが軽減できたのは大きな変化です。

映像制作業界の今後と課題

バーチャルプロダクションの研究開発拠点を設置する会社も増えています。松竹株式会社は、2022年1月に「代官山メタバーススタジオ」をオープンし、歌舞伎公演「META歌舞伎 Genji Memories」を生配信で上演しました。歌舞伎・バーチャルプロダクション・アニメ演出を組み合わせた、新感覚の歌舞伎作品です。このように、現実空間と仮想空間(メタバース)を融合させた、新たなエンタメコンテンツの制作が進んでいます。

しかしながら映像制作業界の課題は、バーチャルプロダクションを扱える人材の不足が挙げられます。バーチャルプロダクションの活用を進めるためには、LEDディスプレイを調整できる技術者やレンダリングエンジンを扱えるエンジニアなど、専門的な人材を確保・育成しなければなりません。

また、撮影スタジオの整備も課題です。テナントビルにスタジオを設ける場合、天井高がカメラアングルの制限になったり、音響や振動、電気容量の問題で、撮影が希望どおりにできない可能性があります。建物や周辺環境は、バーチャルプロダクションを用いた制作を進める上でクリアしなければならない問題です。

参考:松竹事業開発本部「バーチャルプロダクション技術を活用した歌舞伎公演 『META歌舞伎 Genji Memories』」

さまざまな業界への展開

時間や場所にとらわれずに撮影できるバーチャルプロダクションは、コロナ禍において特に注目されました。今後、さらにニーズが高まると予想されます。そして、映画や音楽といったエンターテインメント業界だけでなく、企業のセミナーや株主総会、コマーシャルなど、さまざまな場面で活用されることが期待されています。

まとめ

今回は、バーチャルプロダクションについて、魅力や活用事例、今後期待される可能性などを解説しました。映像制作に新たな可能性を生み出したバーチャルプロダクションは、CMやドラマの撮影だけでなく、今後はさまざまな業界で活用されることが期待されます。ビジネスで効果的に活用するために、バーチャルプロダクションへの理解を深めましょう。

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