プロジェクションマッピングとは、建物や物体に映像を投影し、立体的に見せるなど視覚効果を生み出す技術のことです。実は、エンタメ以外に製造業や広告宣伝でも活用されています。この記事では、プロジェクションマッピングとはどのような技術か、メリットや制作のポイント、活用事例などをご紹介します。
■目次
物体に映像を投影するプロジェクションマッピングとは
プロジェクションマッピングとは、立体的な物体や建造物にプロジェクターを用いて映像を投影し、重ね合わせた映像にさまざまな視覚効果を生み出すパフォーマンスや技術のことです。
プロジェクションマッピングでは平面のスクリーンではなく、建物のような立体的なものに映像を投影します。そのため、駅舎や歴史的建造物をパフォーマンス空間にできるのが特長です。
建物が変形しているように見えたり、動いているように見えたりと、リアルとバーチャルを組み合わせた幻想的な世界を楽しめます。
プロジェクションマッピングの歴史
プロジェクションマッピングの歴史は意外に古く、1970年頃から活用されています。アメリカのディズニーランド・パークで、ホーンテッド・マンションに登場する胸像に使われていました。プロジェクションマッピングによって、胸像がまるで生きて話しているかのような演出を実現したのです。1983年には、東京ディズニーランドでも使われ始めました。
その他にも、プロジェクションマッピングという名前はなかったものの、似たような技術が芸術分野でも使われていたといいます。
プロジェクションマッピングで立体的に見える仕組み
プロジェクションマッピングは、投影する物体(スクリーン)の形状に合わせて映像を制作し、映像がスクリーンに重なるように調整・投影することで成立します。近年では、補正技術の進化により、複雑な形状の物体にも投影できるようになりました。
プロジェクションマッピングでは「飛び出しているように見せたい」「動いているように見せたい」など、生み出す視覚効果を意識して映像を制作します。その際、鑑賞者がどこから見るかを意識して映像を制作することが重要です。鑑賞者にとっては映像がリアルに、かつ立体的に見え、まるで実際に物体の一部が動いたり飛び出たりしているような錯覚を起こします。
プロジェクションマッピングを活用する3つのメリット
プロジェクションマッピングは、アートやイベントなどのエンタメ分野で広く用いられています。プロジェクションマッピングならではの独自性のある表現により、話題性もあるため、多くの方を惹きつけられます。さらにエンタメ業界だけではなく、製造業の業務効率化にも活用できる便利な技術なのです。
以降では、プロジェクションマッピングを活用する3つのメリットについて解説します。
1.独自性のある表現が可能
プロジェクションマッピングは、表現の幅が広いのが特長です。投影する映像、投影する物体、音響とさまざまな要素が組み合わさって成立します。そのため、独自性のある表現が可能になります。投影する空間の特性に合わせた映像を制作するので、その空間ならではの魅力的なパフォーマンスを実現できます。
他のイベントや広告方法と差別化し、効果的な表現ができるのが大きなメリットです。
2.注目されやすく広告効果が高い
プロジェクションマッピングは注目されやすく、さらに広告効果が高い点も魅力です。イベントで強いインパクトを与えられ、多くの方を惹きつけられます。また、オリジナリティにあふれ、完成度が高い作品を制作すれば、SNSや動画投稿サイトにアップされ、拡散される可能性も高くなります。
繰り返し鑑賞してもらえば、持続性のある販促ツールとなります。
3.活用の幅が広く業務効率化にも役立つ
プロジェクションマッピングは、エンタメ分野だけではなく、さまざまな場面でも活用できるのがメリットです。製造業では、組み立て作業をスムーズに行えるよう指示を出すために、プロジェクションマッピングが使われている事例があります。
他にも、組み立てラインでの仕分け作業や、物流センターでのピッキングなどで業務の効率化に役立っており、活用の幅が非常に広くなっています。
プロジェクションマッピング制作に必要な3つのもの
プロジェクションマッピング制作では、映像を制作するためのパソコンと専用ソフト、映像を投影するためのプロジェクターが必要です。それぞれさまざまな種類があり、スペックや操作性などが異なります。映像のクオリティや投影内容によっては、スペックの高いパソコンや業務用のプロジェクターが必要になるため注意しましょう。
ここでは、プロジェクションマッピング制作に必要なものについて解説します。
1.スペックの高いパソコン
プロジェクションマッピングのように複雑で高度な映像を制作し、スムーズに再生するためには、スペックの高いパソコンが必要です。特に映像制作では、グラフィックやCGの制作、レンダリングや映像編集など複数の作業を行います。
1台のパソコンで対応させるには、処理性能の高いCPUや十分なメモリ、HDドライブを備えたパソコンを用意しましょう。
2.映像を投影するためのプロジェクター
映像を空間や建物に投影するためには、プロジェクターが必要です。家庭用のプロジェクターでも投影はできますが、大規模なイベントで広い場所に投影するためには、業務用の製品が必要になります。
投影先との距離や投影する物体の大きさなどによって必要な明るさや解像度が異なり、それらによって価格が高くなります。投影する場所に応じて、最適なプロジェクターを選ぶことが大切です。
3.プロジェクションマッピング専用ソフト
プロジェクションマッピング用の映像を制作したり、スムーズに投影したりするためには、専用のソフトが必要です。直感的に操作できる初心者向けのソフトから、レイヤーを使った複雑な映像制作に適したものまで、さまざまな種類のソフトがあります。
機能や価格を比較検討し、作品に合った使いやすいソフトを選びましょう。
プロジェクションマッピング制作の3つのポイント
プロジェクションマッピングを制作する際は、制作の目的やコンセプトを明確にする必要があります。目的やターゲットが決まったならば、高い集客が期待できる場所を選びましょう。さらに、リアルな演出で鑑賞者を惹きつけられるよう、投影する場所の特徴を理解することが大切です。
ここでは、プロジェクションマッピング制作を成功させるためのポイントについて解説します。
1.制作の目的やコンセプトを明確にする
制作する前に、プロジェクションマッピングを制作する目的やコンセプトを明確にしましょう。演出のインパクトや映像の精細さにこだわることも大切ですが、それだけで満足してしまうと、何を伝えたいのかがわからない作品になってしまいます。
メッセージ性のある感動する作品を完成させるためには、作品を通して何を伝えたいのか、鑑賞者にどのような行動を促したいのかなど、上映後の効果や行動変化を意識しましょう。
2.目的やターゲットに合わせて場所を選定する
次に目的やターゲットに合わせて、投影する場所を選定します。場所の選定を間違えると、集客に失敗してしまう可能性が高くなります。イベントの世界観や、紹介したい商品やサービスのターゲットなどにマッチした場所を選びましょう。
場所を選ぶ際は、事前にプロジェクションマッピングを行ってよいかを確認しなければなりません。プロジェクションマッピングは、屋外広告物に該当する可能性があり、場合によっては屋外広告物法違反になってしまいます。法令や条例違反にならないよう、事前の確認と調整が必須です。
3.投影する物体の特徴を理解する
プロジェクションマッピングの制作にあたって、映像を投影する空間や物体の特徴を理解しましょう。綺麗に投影するためには、投影対象物のサイズや形状を把握し、それをもとに映像を制作する必要があります。また、適切な演出や音響のためには、投影場所の雰囲気や周囲の環境などもチェックしておきましょう。
クオリティの高い映像を制作したい場合は、映像制作会社に依頼するのがおすすめです。当社では、さまざまな目的に応じた高品質の動画を制作しています。ニーズを丁寧にヒアリングした上で適切なコンテンツを提案し、専門の機材やプロの技術を用いてクオリティの高い動画を制作可能です。プロジェクションマッピングの映像を制作したい方は、ぜひお問い合わせください。
https://www.generalasahi.co.jp/cd/movie/contactform/
プロジェクションマッピング活用事例5選
最後に5つの事例を通して、プロジェクションマッピングがどのように採り入れられているか3428を見ていきましょう。エンタメやイベントでの演出のほか、業務の効率化やブランドのプロモーションに活用された事例を紹介しています。プロジェクションマッピングをビジネスに利用して成果をあげたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.水族館のイルカショーの演出に活用
アクアパーク品川は、イルカショーにプロジェクションマッピングを活用している事例です。客席の周りに貼られたスクリーンと、ステージ中央部の360度ウォータースクリーンに映像を投影し、ショーを幻想的に彩っています。流れ落ちる水のパターンと次々に移り変わる映像や音楽に合わせて、イルカがパフォーマンスする姿は圧巻です。
夏は花火、冬は星空のように、季節ごとに異なるテーマのショーを楽しめます。
2.東京駅の駅舎に歴史を再現
2012年9月、東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の完成を祝して「TOKYO STATION VISION」というイベントが開催されました。そこで人々の注目を集めたのが、駅舎を使った3Dプロジェクションマッピングです。
幅120m、高さ30mの駅舎をスクリーンにし、東京駅や鉄道をめぐる100年の歴史を再現しました。投影には46台の超高輝度プロジェクターが使用され、2日間で2万人以上の観客を動員した大規模なイベントでした。
3.製造業の組立作業をサポート
株式会社ジャロックは、組立作業をプロジェクションマッピングでサポートする「プロジェクションアッセンブリーシステム作業台」を販売しています。作業台に、作業指示書や注意点を投影し、正しくスムーズに組み立てられるように支援する製品です。
誤った動作を検知すると、エラー音が鳴り、正しい位置をライトで教えてくれます。工程ごとの動画も自動で再生され、外国人労働者にもわかりやすく教育できるのが特長です。
参考:株式会社ジャロック「プロジェクションアッセンブリーシステム作業台」
4.物流業の仕分け作業を効率化
株式会社アイオイ・システムは、「プロジェクションピッキングシステム® PPS」を販売しています。壁や床、棚などに画像や文字、QRコードなどを直接投影でき、ピッキングや仕分け作業をスムーズに行えるのがポイントです。例えば、製造業における部品のピッキングや、調剤薬局での薬剤のピッキングなどに活用できます。場所を把握していないと時間のかかる作業を、プロジェクションマッピングの技術で効率化できる製品です。
参考:株式会社アイオイ・システム「プロジェクションピッキングシステム® PPS」
5.インパクトのあるプロモーションを実現
2010年、ファッションブランドのラルフ・ローレンでは、デジタルイノベーション10周年を記念して、ロンドンにあるショップの外壁にファッションショーをイメージした映像を投影しました。建物が変幻自在に動いているかのような映像や、実写のモデルのウォーキング映像、商品の映像などを投影し、オリジナリティのある印象的なプロモーションを実現しました。
参考:YouTube「The Official Ralph Lauren 4D Experience – London」
まとめ
プロジェクションマッピングとは、立体的な物体に映像を投影し、重ね合わせた映像にさまざまな視覚効果を生み出す技術やパフォーマンスのことです。建物の壁面や複雑な形状の建造物にも投影できるのが特長で、リアルとバーチャルが融合した独特なパフォーマンスを実現できます。
プロジェクションマッピングはエンタメ分野だけではなく、企業のプロモーションや製造業など、幅広い場面で活用されている技術です。インパクトのある広告や業務効率化を目指す方は、ぜひ採り入れてみてはいかがでしょうか。