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リアルタイムレンダリングとは?活用例からみる種類、メリットを解説

今回のテーマは「リアルタイムレンダリング」。

レンダリング(Rendering)とは、3DCG画像や動画を制作する現場においてよく聞く言葉です。この工程は膨大な量のデータを処理するため、非常に時間がかかります。ところが最近は高性能なGPUを用い高速に処理する「リアルタイムレンダリング」の需要が高まっています。

この記事では「リアルタイムレンダリング」の活用例をご紹介しながら、種類やメリット、今後の課題などを解説していきます。

リアルタイムレンダリングとは?

レンダリングはさまざまな業界で使われており、映像・DTM(デスクトップミュージック)・WEB・3DCGなどがありますが、ここでは主に3DCG映像について考えます。

レンダリングは、映像・エフェクト・画像・音声・BGMなどの複数のデータを1つの動画ファイルとして処理することです。それぞれのデータ量が多いため、レンダリングという処理を行うことでデータを圧縮し、再生可能な状態にします。レンダリングが行われることで、視聴者は1つの動画として初めて目にすることができるようになります。

それでは「リアルタイムレンダリング」とは何でしょうか。
リアルとあるように即時に処理を行い、それと同時に映像・音声などの再生を行うことです。処理を開始してすぐに出力するためには高速でのデータ処理が必要ですが、高性能のGPUといったハードウェアの機能が向上したことで、リアルタイムレンダリングの活用が拡大しつつあります。

通常の演算処理はCPUで行われますが、リアルタイムレンダリングでは、複数のタスクを同時に処理することに長けているGPUを活用することが一般的です。その結果、短時間で処理できるデータが増えて制作時間を短縮でき、画質も向上します。

従来は毎秒30~60フレームの映像を出力するのに数時間かかるものでしたが、技術の向上によってリアルタイムレンダリングも多く使われるようになりました。オンラインゲームなどの、インタラクティブ性の高いコンテンツに多く活用されています。

リアルタイムレンダリングとプリレンダリングとの違いは?

レンダリングはこれまで「プリレンダリング」という方法が一般的でした。Pre(プレ)とは事前を指す言葉です。つまりプリレンダリングとは、前もって演算処理しておき、必要に応じて出力するものです。オフラインレンダリングとも呼ばれ、前もってレンダリングを行って映像などを完成させておく方法です。

リアリティのある映像を出力するには膨大なデータ処理が必要で、レンダリングに時間がかかります。プリレンダリングは高速でデータを処理する必要がなく、時間をかけてレンダリングできるため、より高画質な映像を出力することが可能になります。

レンダリングの種類

レンダリングでは、3Dデータにおける「光」「質感」「模様」「色味」などの要素を2Dの映像として表現します。そのために必要なのが、計算の方法が異なるさまざまな描画方式です。

得意とする表現も違いがあるため、複数のレンダリングの方法を組み合わせて映像を出力することが一般的です。レンダリングの方式には、どのような種類があるのかを見ていきましょう。

レイトレーシング

レイトレーシング(Ray Tracing)は、現実世界の光の及ぼす影響を物理計算によって反映して、映像として出力する方式です。光の量や方向を把握し、屈折や反射など現実で起こりうる影響をシミュレーションします。リアルなグラフィックスが求められる際によく使われる、レンダリングの方法です。

人間は目に入る光によって、風景や物体を認識しています。レイトレーシングでは、光の影響を計算して、よりリアリティのある映像や画像を生成します。

そのためには、イメージ通りの出力を得るために光(ライト)の当て方をコントロールするライティングが重要です。レイトレーシングによってリアリティのあるライティングを再現できるため、実物と区別がつかないほど精度の高い表現ができます。水たまり、ガラス、地面からの照り返しなど、さまざまな光の表現が可能です。

ラジオシティ

ラジオシティ(Radiosity)も、ライティングを用いて表現する技術です。レイトレーシングは光源から出た光を追跡するものですが、ラジオシティでは物体表面に当たった光が反射・拡散することで影響を及すものを再現する方式です。
レイトレーシングは直接光を表現するのに適していますが、ラジオシティでは間接光を表現するのに適しています。レイトレーシングに加えて環境光などもリアルに表現ができますが、演算処理が複雑になるため時間がかかるのがデメリットです。

スキャンライン

スキャンライン(Scanline)とは、画面上の水平方向の画素の並びである「走査線」を意味する言葉のことで、レンダリングのスキャンラインでは、走査線を上から下へ並べたものとして画像や映像を出力します。

さらに走査線上に奥行きをもたせて走査面を作成し、映し出す物体と走査面の交差する座標を計算して、視点から近いものを優先的に出力する方式です。一つの物体の平面でも色の見え方は均一ではなく、光の当たり具合によって陰影がつきます。この平面の陰影を計算して走査面の色を決定します。

そのため、スキャンラインレンダリングでは、立体感を出せるフォンシェーディングなどを活用することで、よりクオリティの高い表現が可能になります。レンダリングが高速なためリアルタイムレンダリングに適していると言えますが、透明なオブジェクトや複雑な反射面が含まれると正確な表現は難しくなります。

トゥーンレンダリング

トゥーンレンダリング(Toon Rendering)とは、立体的な映像を2次元的にデフォルメする方式のことです。アニメーションやコミック風の表現において多く使われる方式で、トゥーンシェイドと呼ばれることもあります。3Dの曲面や陰影を省いて、平面的な線画のような表現になります。

3Dで作ったキャラクターは、さまざまな角度から見たり映したりできます。しかし、3Dのままでは2次元のアニメやゲームにうまく溶け込まず、不自然なリアルさが残ることは少なくありません。そこで、自然に溶け込ませるためにトゥーンレンダリングが用いられます。陰影の表現が少なく高速に処理できるため、リアルタイムレンダリングに適しています。

リアルタイムレンダリングのメリット

リアルタイムレンダリングは映像や画像への出力が即時にできるため、これまでにできなかったことも可能となります。ユーザーの満足度の向上や体験価値の創出ができるだけでなく、制作側にとっても効率よく開発できるようになっています。

ユーザーの満足度アップ

リアルタイムレンダリングを用いたオンラインゲームでは、ユーザーの操作が即時に画面に反映されるため、臨場感のある体験ができます。スムーズでリアリティのある世界観を楽しめ、まるで自分がゲームの世界にいるような没入感を味わえるでしょう。

これまでになかったリアリティあふれる体験ができ、ユーザーの満足度につながると考えられます。

開発の効率化

リアルタイムレンダリングは、出力結果を即時に確認できます。プリレンダリングでは、データの処理開始から出力までに数時間から数日かかることもあります。そのため、リアルタイムレンダリングを活用すれば、開発にかかる時間を大幅に短縮できるでしょう。

もし不具合が見つかればすぐに修正でき、時間のロスは少なくなります。また、新たなアイディアも気軽に試すことができます。

インタラクティブなコンテンツが制作可能

従来のゲームの操作は、ある程度の自由度はあるものの限定的で一方向的なものでした。しかし、リアルタイムレンダリングではユーザーの操作によって出力結果が柔軟に変化します。

待ち時間も少なくなり、ほぼリアルタイムで反映するものもあります。これを利用すれば双方向性のあるコンテンツを制作できるため、ユーザーにとって満足度の高いコンテンツを制作できるのです。

リアルタイムレンダリングのデメリット

出力が早く、インタラクティブなコンテンツに利用できるリアルタイムレンダリングにはデメリットもあります。プリレンダリングと比較すると、表現の幅や処理の重さに課題が残っています。さらに、制作のための環境を整えることも必要です。

細かな表現は難しい場合がある

3DCG制作ソフトによっては、リアルタイムレンダリングで使えない機能や十分な効果が得られない機能があります。

リアルタイムレンダリングは演算しながら表示されるため、現状ではポリゴン数やフレームレート、テクスチャの解像度などに制限が出てしまい、なかなか精度を上げられません。流体シミュレーションや髪の毛や服のアニメーション、透過の表現などの、細やかな表現がその例です。

リアルタイムレンダリングでは高速な処理が必要となるため、演算処理が省略されることもあります。その結果、画質が劣ったりノイズが発生したりすることは理解しておきましょう。細やかな表現をするには、高度な計算や時間が必要です。そのため、クオリティを追求する場合にはプリレンダリングの方が向いているといえます。ただし、1フレームのクオリティは劣ってもインタラクティブな反応の速さによるリアリティは映像全体のクオリティを上げる要因となるでしょう。

処理が重くなりやすい

リアルタイムレンダリングでは、データを高速に処理します。処理の数が多ければ時間がかかり、動作が重くなるなどの影響が出てきます。表示デバイスのスペックや通信回線の速度によっては、出力できない場合も出てきます。処理やレンダリングの方式に注意することも必要です。

例えば、バーチャルプロダクションといった新しい映像表現には、CGをリアルタイムレンダリングできるゲームエンジン(ゲーム開発プラットフォーム)が欠かせません。今ではプリレンダリング並みのレイトレーシングのリアルタイム処理が可能になってきています。

また手法として背景をプリレンダリングしてメインの部分にリアルタイムレンダリングを採用することで、制作スピードとクオリティを両立することができるようになっています。

作業環境のための追加コストが発生する

リアルタイムレンダリングは、事前にレンダリングを行うプリレンダリングとはワークフローが異なります。そのため、リアルタイムレンダリングを行うための環境を整えることや、技術を習得することが必須になります。

リアルタイムレンダリングでは高速で並列処理の行える高性能なGPUが必要な上、性能を改善したい場合は、レンダリングサーバーやクラウド上で演算できるものを選ぶことになるでしょう。高性能なGPUを導入するには、数万円から数十万円のコストがかかります。また、素材の調達や外部ツールとの連携など、リアルタイムレンダリングを行うための下準備も欠かせません。工程が増えたり新たな技術を要したりすると、その分コストも増えるでしょう。

リアルタイムレンダリングの活用分野

すぐに出力結果を得られるリアルタイムレンダリングは、さまざまな分野で活用されています。オンラインゲームをプレイしたことのある方は、気づかない間にリアルタイムレンダリングの技術の恩恵を受けています。ほかにも、建築やVR・AR、広告などさまざまな分野で、リアルタイムレンダリングの活用が進んでいます。

オンラインゲーム

リアルタイムレンダリングを活用している主なものに、オンラインゲームがあります。操作に応じてキャラクターを動かし、ほかのユーザーとのインタラクティブなやり取りが可能です。データの高速処理によって、美しい映像やなめらかな動きをリアルタイムで表現できます。その風景や世界観から、まるでゲームの中に入り込んだような没入感を楽しめるでしょう。

建築

リアルタイムレンダリングは、建築業界でも活用されています。2Dではわかりにくい図面を3Dの立体的表現によって、顧客と共有しやすくなり、確認しづらかったポイントをその場でチェックできます。そのほか壁や天井の色、家具の配置といったインテリアを即時に確認することができ、顧客にとってはイメージしやすく、意思決定のスピードアップにもつながります。

VR・AR

VRやARの分野でも、リアルタイムレンダリングの技術は活用されています。どちらも、ユーザーの動きが映像へダイレクトに反映されます。VRは専用のゴーグルを装着するため、仮想空間をよりリアルに楽しめ、没入感を味わえるでしょう。実際の風景に架空のものや情報を付け加えられるARでは、これまでにないユニークな体験を提供できます。

広告

リアルタイムレンダリングを広告に活用することで、商品の特徴やよさを「伝える」だけでなく「体験してもらう」ことが可能になります。

例えば、住宅の展示会や車の試乗などの用途があります。リアリティのある体験ができるため、顧客の購買意欲を高められるでしょう。直接訪問が難しい場合でも、環境を整備することで擬似体験してもらえるため、購入してもらえるチャンスを増やせると考えられます。

リアルタイムレンダリングの今後の課題

現状では出力される映像の品質は、リアルタイムレンダリングよりもプリレンダリングが優れています。しかし、リアルタイムレンダリングの強みは短時間での処理が可能なことや、従来にないコンテンツを制作できる可能性があることです。

そのため、プリレンダリングは主に高品質な映像作品、リアルタイムレンダリングは主にオンラインゲームに活用されています。このように、双方の得意分野を考慮して使い分けることで、コンテンツそのものの質や利用者の満足度を向上できるでしょう。

レンダリングの技術は年々進化しており、リアルタイムレンダリングのデメリットを克服するようなソフトウェアも登場しつつあります。リアルタイムレンダリングの技術がプリレンダリングに追いついてくれば、ARやVRのコンテンツの重要な技術としてなど、より多岐にわたる分野で活用されるようになるでしょう。さらに、プリレンダリングにかかる時間の短縮なども考えられます。双方の発展に、今後も注目しましょう。

当社ではブランディング映像やWEB上の展示会などを多く手掛けており、お客様への丁寧なヒアリングを行い、アウトプットまで一貫して承っています。

特に、工業系のCGや、実写との合成を用いた製品紹介PVなどを得意としています。高品質でクオリティにこだわった映像制作をご要望であれば、ぜひお問い合わせください。

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