コロナ禍を経て、ライブ配信の市場規模は拡大しています。2023年の市場規模は700億円を超え、2024年には1000億円に届くまで成長すると予測されています。ライブ配信のジャンルでは「ゲーム配信」がトップで、次いで「音楽」となっています。他に、注目されるジャンルとしては「ライブコマース」が挙げられます。
企業によるライブ配信のビジネス活用では、ライブコマース以外にブランディング、オンラインセミナー(ウェビナー)、オンラインイベントなどがあります。そして、ライブ配信をするためにはライバーという存在が必要になってきます。
今回の記事では、ライバーをビジネス活用するメリットと取り組むための準備や成功のポイントについて解説します。ライブ配信の活用に興味のある方は参考にしてください。
■目次
ライバーとは?
本題に入る前に、まずはライバーのことをおさらいしておきましょう。
ライバーとは、文字通りライブ配信を行う人のことです。コロナ禍による生活の変化やオンラインの進歩によって、注目されている職業となりました。
顔出しで人前に出るのが好きであれば、自分の趣味や特技を活かした配信をする人もいます。まさに、自由な発想でライブ配信を行い、ライバーを生業としている人も少なくありません。
ライバーになることで2つのメリットが考えられます。
- 収入を得られる
視聴者からの投げ銭が収入源となり、ファンがつくほど収益もアップし、職業として成り立つことも可能
- 知名度・認知度が上がる
名前を知られることで、さまざまな業界からの注目も集まります。モデルやアイドルといった芸能界への道も開ける可能性があります。
ライバーをビジネス活用するライブコマースとは
ライブ配信をビジネス活用する方法としては、ブランディングや販売促進、社内教育、IRなど、さまざまな選択肢があります。中でも、ライブ配信で収益を得ているライバーを活用した、ライブコマースが注目されています。
ライブコマースとは、ライブ配信用のアプリやプラットフォーム、SNSを活用してライブ配信を行い、配信中に商品を紹介し、視聴者に購入してもらうEコマースの手法です。視聴者は、出演者とコミュニケーションをとりながら、オンラインで商品を購入できます。
ライバーをビジネス活用する7つのメリット
ライブコマースは、自社の社員のみで行うことも可能です。しかし、ライブ配信のプロであるライバーに依頼することで、より高い効果が期待できます。
ライバーとは、ライブ配信で収益を得ているプロのことです。リアルタイムで視聴者とコミュニケーションをとり、配信中に視聴者から投げ銭を受け取り、収益を得ています。それぞれが自分の得意ジャンルを活かして、オリジナリティのある配信を行っているのが特徴です。
YouTuberと似ていますが、YouTuberは撮影・編集した動画をアップするのに対し、ライバーはリアルタイムで配信を行う、という違いがあります。そのため、ライバーには動画の編集技術よりも、視聴者のコメントから話を広げられる話術や、トラブルにも対応できる臨機応変さなどが求められます。
以下では、ライブ配信で販促活動を行うメリットに加え、出演者としてライバーを起用するメリットを解説します。
1.ライバーのファンにアプローチできる
ライバーを起用する大きなメリットは、ライバーのファンにアプローチできることです。ライバーは、それぞれファンを抱えており、ライブ配信プラットフォームの中で影響力を持っています。中には、ライブ配信で生計を立てているライバーもいるほどです。
ライバーに依頼してライブコマースを行うことで、ライバーのファンに対して自社の商品やサービスをプロモーションできます。これまでアプローチできていなかった層にも訴求でき、新規顧客を開拓することができるのが魅力です。
2.ライバーが持つノウハウを活用できる
ライバーに協力してもらうことで、ライバーが持つノウハウを活用できるのもメリットです。
ライブ配信を多くの方に見てもらうためには、告知方法や撮影方法、ライブ配信の内容や配信後のファン獲得方法など、さまざまなコツがあります。自社だけでライブ配信を始めても、コツが掴めず、視聴者の獲得に苦労するでしょう。
ライバーを活用することで、ライバーが持つノウハウを利用でき、効果的なライブコマースを実現できます。
3.商品の使い方や魅力を動画で説明できる
ライブコマースを実施するメリットは、商品の使い方や魅力を動画で説明できる点です。写真や文章だけでは説明しきれない要素を、配信で十分にアピールできます。
例えば、洋服の素材感や色合い、化粧品のテクスチャや発色などは、動画の方が伝えやすいでしょう。家電やアウトドア用品などは、ライバーが実際に使い方を紹介しながら説明できるため、使用感が分かりやすくなります。
4.視聴者とリアルタイムでコミュニケーションが取れる
ライブコマースなら、コメントを通じて視聴者とリアルタイムでコミュニケーションが取れるのも特長です。
ライブ配信中にコメントで質問を受け付け、出演者が随時回答することで、視聴者は商品への疑問や不安をその場で解消できます。
配信側も、配信中に寄せられた視聴者の疑問や要望をヒントに、今後の販促活動や商品開発に役立てられます。
5.楽しんでもらいつつ販促できる
ライバーを活用したライブコマースでは、ただ商品を説明するだけでなく、視聴者にとって楽しめるコンテンツとして販促活動を行えるのがメリットです。
ユニークでエンタメ性のあるコンテンツにできれば、ライブ配信をコンテンツとして楽しんでもらいながら、自然に商品の魅力を訴求できます。
視聴者も、一般的な広告に比べると、ストレスなく商品の情報を受け入れられるでしょう。
6.購入までの導線がスムーズ
多くのライブ配信プラットフォームでは、配信で紹介した商品の購入ページにすぐアクセスできるよう、リンクを設置できます。購入までの導線がスムーズなのも、ライブコマースの魅力です。
ライブ配信中、あるいは配信終了後は、視聴者の商品への興味が高まっているタイミングです。その状態ですぐに購入ページをクリックしてもらうことで、購買につながりやすくなります。
7.SNSとの相性がよい
ライブコマースは、専用のプラットフォームだけでなく、InstagramやTikTokなど、SNSのライブ配信機能でも実施できます。
もともと運用しているSNSのライブ配信機能を使えば、アカウントのフォロワーに配信を見てもらえる可能性が高いです。逆に、ライブコマースによって獲得したファンにアカウントをフォローしてもらえる場合もあります。
SNSとの相性が良いため、SNS運用に力を入れている企業は、積極的にライブコマースを活用しましょう。
ライブコマースに適した商品
ライブコマースの効果を高めるためには、紹介する商品を見極めることが重要です。
ライブコマースに適しているのは、次のような商品です。
- グルメ
- 日用品
- 家電・家具
- 衣類・ジュエリー
- 化粧品・コスメ
- ベビー用品
- アウトドア用品
若年層向けの商品や、文面や写真だけでは使用感が伝わりにくい商品、配信で見栄えがよい商品は、ライブコマースに適しています。
数量限定の商品もおすすめです。配信中に「あと〇〇個です」とリアルタイムで残数を伝えられるため、ライブ配信を活用して、視聴者に購入を促せます。
さらに、開発ストーリーがある商品は、開発者がライブ配信でその想いを語ることで、視聴者に訴求できます。
一方、健康グッズやサプリメントなど、ターゲットの年齢層が高い商品は、ターゲットに配信を見てもらえない可能性が高く、ライブコマースには不向きかもしれません。
ライバーをビジネス活用する際の5つの準備
ライバーを活用してライブコマースを実施するためには、配信プラットフォームやライバーを選定し、事前に購入・決済までの導線を整備する必要があります。
さらに、当日トラブルなく配信できるよう入念にリハーサルをしたり、集客を工夫したりと、さまざまな準備が必要です。
ここでは、ライバーをビジネス活用する際の5つの準備について解説します。
1.ライブ配信プラットフォームを選定する
まずは、ライブ配信を実施するプラットフォームを選びましょう。ライブ配信プラットフォームには、以下のように多くの種類があります。自社に合ったプラットフォームを選定することが重要です。
<SNS>
- YouTube
<専用プラットフォーム>
- SHOWROOM
- HandsUP
- BASEライブ
- Live Shop!
2.適切なライバーを見極める
ライブコマースの効果を高めるためには、ライバーの見極めもポイントです。
単にフォロワー数だけを見て選ぶのではなく、商品のターゲットとライバーのフォロワー属性が一致しているか、ブランドイメージを傷つけるリスクがないかなどを確認しましょう。例えば、女性向けのコスメを紹介したい場合は、若い女性のフォロワーが多いライバーを選ぶのが有効です。ライブコマースの実績が豊富なライバーであれば、安心して依頼できます。
ライバー選定を間違えると、ターゲットに配信を見てもらえなかったり、配信中にトラブルが起きたりするリスクがあるため、慎重に選びましょう。
3.リハーサルを行う
ライブ配信中のトラブルを防ぐためには、事前のリハーサルが欠かせません。
インターネット接続に問題がないか、音声や照明は問題ないかなどを事前にテストし、本番ではよい環境で配信できるよう準備しましょう。
ライバーとの打ち合わせも重要です。配信の流れや商品について伝えるべきこと、注意点などを細かくすり合わせ、入念にリハーサルを行いましょう。
機材やインターネット接続などの配信トラブルが怖い場合や、優れた環境で配信したい場合は、映像のプロに協力してもらうのがおすすめです。当社は、スタジオ配信から屋外ロケ配信まで対応の、ライブ配信サービスを提供しています。ライブ配信の準備から当日の配信、配信後のアクセス分析まで総合的にサポートするため、はじめてライブ配信をする場合でも安心です。ライブ配信を活用したい方は、ぜひお問い合わせください。
4.事前に告知して集客する
ライブ配信の視聴者を集めるためには、事前にSNSで告知したり、プレスリリースやメールを配信したりと、集客を工夫する必要があります。ライバーからの協力も仰ぎながら、積極的に集客を行いましょう。
ライブ配信の視聴者限定セールを企画し、事前に告知するのも効果的です。ライブ配信を見るモチベーションにつながります。
5.スムーズに購入・決済できる導線を整備する
ライブコマースを売上につなげるためには、視聴者が商品に興味を持っているうちに購入・決済してもらうことが必要です。
ライブ配信サービス内でショップを構築する、あるいは外部のECサイトへの分かりやすい導線を確保するなどして、スムーズに購入できる仕組みを整えましょう。購入ページが分かりにくいと、視聴者がページを探しているうちに購買意欲が薄れてしまう可能性があります。
また、複数の決済手段に対応できるようにするのもポイントです。クレジットカード決済のほか、コンビニ決済やQRコード決済、キャリア決済など、幅広い方法に対応しましょう。
ライバーをビジネス活用する際の3つのポイント
ライブコマースに成功するためには、コンテンツの工夫が求められます。さらに、ライブ配信後に視聴者をフォローしてファンを獲得したり、次回のライブコマースに向けて分析を行ったりと、配信後の行動も重要です。
ライバーを活用する場合は、著作権など関連する法律に抵触しないよう、事前の打ち合わせも欠かせません。
以下では、ライバーをビジネス活用する際の3つのポイントについて解説します。
1.視聴者が楽しめるコンテンツにする
最後まで多くの視聴者に配信を見てもらうためには、視聴者が見ていて楽しいと思えるコンテンツにする必要があります。
商品をただ紹介するだけでは、視聴者から飽きられてしまい、離脱率が高くなってしまいます。ライバーが実際に商品を使っているところを見せる、商品に合うコーディネートを数パターン紹介する、ライバーや利用者の体験談を交えるなど、視聴者が楽しめるコンテンツになるよう工夫しましょう。
2.ライブ配信後のフォローと分析を行う
ライブ配信をして終わりではなく、その後視聴者をフォローすることもポイントです。ライブ配信で説明しきれなかった部分や、対応できなかったコメントについて、SNSや購入ページなどで補足しましょう。
ライブ配信をアーカイブしてSNSに投稿すれば、配信をリアルタイムで見られなかったフォロワーにも喜ばれます。ファンを獲得するためには、ライブ配信を視聴してくれた方にお礼のコメントをするのも効果的です。
さらに、ライブ配信の分析を行い、改善につなげることも大切です。視聴者数やコメント数、コメント内容、購入数などのデータを集計して振り返り、次回のライブ配信に活かしましょう。
3.関連する法律に注意する
ライブコマースの際は、以下のような法律に注意する必要があります。
- 特定商取引法:取引の条件や販売者に関する情報の広告表示、返品制度に関する表示
- 景品表示法:優良誤認表示、有利誤認表示
- 民法:契約不適合責任
- 健康増進法や薬機法
企業が気をつけていても、ライバーの認識不足で法律に抵触する発言をしてしまう可能性もあります。台本やNG表現の一覧などを事前に共有し、ライバーとの認識をすり合わせましょう。
ライブ配信をビジネス活用している事例
ここでは、ライブ配信をビジネス活用している大丸松坂屋百貨店の事例を紹介します。
株式会社大丸松坂屋百貨店は、2020年の7月から、ライブコマースサービス「HandsUP」を利用して本格的にライブコマースに取り組んでいる企業です。
実店舗の来店者数を増加させ、売上を上げることを目的に、販路の一つとしてライブコマースを活用しています。
例えば、全国の職人が集う物産展「職人展」を開催した際は、職人がライバーとして出演し、ライブ配信を行いました。職人にスポットを当てることで、視聴者に「職人さんの商品を買いたい」「この職人さんに会ってみたい」など、興味を持ってもらうことに成功しました。その結果、ライブ配信の視聴者を物産展に集客することに成功したといいます。
オンラインと実店舗、双方の売上をアップさせる手段として、ライブコマースを活用している好例です。
参考:HandsUP「『人の力』でメディア化するライブコマース。大丸松坂屋百貨店様のHandsUP利用事例をご紹介」
ライブ配信・ライブコマースの今後の展望
ライブ配信市場は拡大しており、今後はより多くの企業がライブ配信を活用することが期待できます。
株式会社Candeeの調査では、毎日ライブ配信を視聴している方のうち、「コロナ禍を機にライブ配信を視聴するようになった」と回答したのは約9割でした。さらに、96.4%が「今後もライブ配信を視聴し続ける」と回答しています。
コロナ禍で盛り上がったライブ配信は、生活様式や働き方の変化を背景に、多くの方々に浸透しています。ライブ配信プラットフォームのほか、ライブ配信機能を搭載したSNSも増えており、ライブコマースは今後も効果的なEコマースの手法のひとつであり続けるでしょう。
参考:PR TIMES「コロナ禍をきっかけに約9割がライブ配信を視聴するようになったと回答 株主発表会、音楽ライブ、商品発表など、幅広いジャンルで視聴される傾向」