動画制作にはいくつかの工程がありますが、今回はその中でも「撮影」に関する専門用語を解説します。プロの撮影現場にはさまざまな専用機材があり、また一般的に馴染みのない専門用語もあります。これから動画の制作・編集を始める初心者の方や、動画の制作を外注しようと考えている企業の担当者の方はぜひ参考にしてください。
■目次
動画撮影で押さえておきたい基本用語
今回は「動画撮影で押さえておきたい用語20選」の「Part1」として、20の専門用語をご紹介します。用語への理解が深まることで、どういった撮影が効果的か、スムーズな撮影のために準備しておくこと、また撮影のイメージなどが掴みやすくなるものです。
ここでは、撮影に必要な機材やレンズ、カメラワークなどについて詳しく解説します。
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レフ板
撮影において最も重要といわれるのがライティングです。ライティングによって、無機質なものに立体感や質感を表現したり、料理を美味しそうに見せたり、季節感を演出したりといったことができるようになります。
ライティングでは光色、光質、光の当て方、光量を調整します。ストロボやライトなどライティング機材はさまざまありますが、「レフ板」もそのひとつです。「リフレクター」とも呼ばれ、光を反射させ、柔らかな反射光で被写体を明るく照らすための機材です。被写体が暗くなってしまう逆光での撮影や陰影をやわらげたい場合、光のコントロールが難しい屋外での撮影の際に特に役立ちます。
大きな白い布や紙でも代用できますが、レフ板には大きさや色が異なるものなどいくつか種類があり、被写体や撮影イメージに合わせて選びます。
さらに詳しく!「撮影におけるライティングとは?機材や種類・ポイントなど基本を解説」
カポック
「カポック」とはレフ板の一種で、主にスタジオ撮影の際に使用される大型の四角い板のことです。発泡スチロール製で、両面が白色、または白と黒の2面のものなどがあります。レフ板と同様にライトの光を反射させ柔らかい光を作り出したり、逆に黒い面を使うことで光の拡散を抑えたりすることができます。
標準サイズが90センチ×180センチと大きいので、反射光を面で作ることができ、レフ板では足りない場合もカバーできます。また大型なため、被写体に当たる余計な光を遮るときにも使用します。
カポックは360度開閉できるようになっているのでV字やL字など自由に設置でき、光の角度を調整することができます。
ホリゾント
「ホリゾント」とは、床と壁面のつなぎ目が緩やかな曲線でつながっている撮影スタジオのことで、「ホリゾントスタジオ」とも呼ばれます。床と壁の境目が分からないので、影ができにくく、空間に広がりを感じる写真や動画を撮影することができます。
ホリゾントの多くが外光を遮断し、壁も床も真っ白です。ライティングすることが前提なので、余計な光の影響を受けずに、被写体をイメージ通りにきれいに撮影することができます。またシンプルなスタジオなので、商品のみにフォーカスした撮影ができます。
ホリゾントの中には、グリーンバックや黒バックもあります。グリーンバックは、後から背景を合成するクロマキー撮影に使われます。黒バックは、白バックとは逆に光を反射しにくいため、コントラストのはっきりした撮影ができます。
バック紙
写真・動画撮影において、被写体の背景として使用する幅広のロール紙のことを「バック紙」といいます。背景がごちゃついて余計なものが映り込んでしまうというときにバック紙を使えば、背景がすっきりし、被写体を際立たせることができます。商品の使い方などを説明する動画であれば、背景は白などシンプルなバック紙にし、商品や操作部分に注目できるようにします。
また、バック紙には演出の役割もあります。例えば洗顔料や化粧水などで瑞々しさを表現する場合は淡い水色を選んだり、春の新作スイーツの紹介なら薄いピンク色で季節感を表現したりなど、バック紙の色や質感によって動画の雰囲気も大きく変わります。
カラーチャート
「カラーチャート」とは撮影時に使用する色のチェック板のことです。24色の正方形が配列されており、反射を抑えるため表面は無光沢です。色の基準となるもので、撮影の際にカラーチャートを使用することで編集時の色合わせがスムーズになります。
使い方は、本番撮影の前に被写体とカラーチャートを入れてテスト撮影を行い、その後カラーチャートを外して本番撮影を行います。撮影後、編集する際にカラーチャートを基に補正します。同じ商品を異なる場所で撮影したり、違うカメラで撮影したりなど、色の偏りが生じやすい環境下でも、カラーチャートを基準に補正するため色再現を統一できるのです。
撮影時には、24色あるうちの18%グレーを基準に適正露出を得ることもできます。撮影の段階で露出を正しく取ることができていれば、ポスプロ(ポストプロダクション)でのカラコレ(カラーコレクション)も効率良く行うことができます。
絞り
「絞り」とは、カメラレンズ内にある光の通り道となる穴の大きさのことです。穴が大きくなる=光がたくさん入る、穴が小さくなる=光が少しだけ入るというように、絞りを調整することで光量が変わります。穴を広げることを「絞りを開ける」といい、穴を狭めることを「絞りを絞る」といいます。
絞り値はF値という単位で表し、F値が小さいほど絞りは開放側にあります。
〈F値を小さくすると〉
絞りを開ける→穴が大きくなる→光量が増える→明るい映像になる
〈F値を大きくすると〉
絞りを絞る→穴が小さくなる→光量が少なくなる→暗い映像になる
このように絞りによってカメラに入る光量を調整することで、映像の明るさも変わります。暗い室内や夜の撮影ではF値を開放側にして明るく撮影する、また反対に日中の晴れた日の撮影では明るすぎるため、F値を絞って光量を抑えるなど、撮影環境や撮影イメージに合わせて設定します。
絞りにはもうひとつ、背景を意図的にぼかすという役割があります。
※ぼかしについて(ページ内リンク)
シャッタースピード
「シャッタースピード」とはカメラのシャッターが開き、内部のセンサーに光が当たっている時間のことです。シャッターが開いている時間が長くなるほど、その分センサーに光が当たる時間も長くなり、光量が多くなります。
「シャッターが開いている時間が短い=露光時間が短い」ことを「シャッタースピードが速い」といい、「シャッターが開いている時間が長い=露光時間が長い」ことを「シャッタースピードが遅い」といいます。
シャッタースピードは、電車や滝など動きのある被写体を撮影する際に重要な要素となります。高速シャッターで撮影をすると被写体が止まったような画像・映像にすることができ、反対に低速シャッターで撮影をすると動きが流れやブレとなって表現できます。写真においてはブレなくきれいに見せるか、流れるように見せるか、表現が大きく変わりますが、動画の場合は基本的に動いているものは動きを見せるほうが自然です。
また、シャッタースピードは通常、1/2秒、1/4秒…1/30秒、1/60秒…などと表現しますが、動画撮影においては数値はある程度固定されます。これは、シャッタースピードがフレームレート(1秒間あたりのフレーム数)と関係するためです。
一般的な動画のフレームレート30fps(30フレーム/秒)の場合、理論上、1/30秒よりも遅いシャッタースピードでは撮影できません。動画撮影ではシャッタースピードをフレームレートの2倍の数値で設定することが推奨されており、フレームレート30fpsの場合はシャッタースピードを1/60秒以上に設定します。
ディフューザー
「ディフューザー」とはストロボなどの前に取り付けて、光を拡散させて和らげる機材です。主に白い薄布やトレーシングペーパー、パラフィン紙、ビニールシート、乳白色のアクリル板などが用いられます。
ストロボなどの強い光を被写体に向けて直接発光すると、光が硬く、影がはっきりと出て、コントラストも強くなります。光源にディフューザーを取り付けることで、柔らかな面光源の光となり、影も目立ちにくくなり、穏やかな印象になります。
望遠レンズ/広角レンズ
カメラのレンズは、レンズからセンサーまでの焦点距離によって、望遠、標準、広角と分類されます。焦点距離50mmが標準で、これは肉眼に近い範囲、遠近感、立体感で撮影することができます。焦点距離が70mmよりも長い場合を望遠、35mmよりも短い場合を広角といいます(35mmカメラ換算)。
焦点距離が変わると画角が変わるため、同じものを同じ場所から撮影しても、見え方が異なり、さまざまな表現が可能になります。
遠くの被写体をカメラに引き寄せる効果があるのが「望遠レンズ」です。遠くにある被写体を目の前で見るように大きく映すことができ、遠距離撮影に適したレンズです。望遠レンズには「引き寄せ効果」のほかにも以下のような特徴があります。
・切り取り効果
画角が狭いため、余計なものを入れずに、見せたいものだけをクローズアップできる。
・圧縮効果
望遠レンズで撮影すると遠近感が薄れるため、手前にあるものと奥にあるものの距離が実際よりも短く感じる。
人の視野よりも広い範囲を映すのが「広角レンズ」です。画角が広いため、広がりと遠近感のある動画を撮影することができます。広角レンズの特徴は以下のとおりです。
・遠近感を強調
近くにあるものほど大きく映り、遠くにあるものほど小さく見えます。そのため被写体を手前に置き、近寄って撮影することで、遠近感が強調され、被写体の存在感が増します。
・広がりを強調
広大な風景はもちろん、画角が広いので、部屋全体を映すなどの屋内撮影にも向いています。
1つのレンズで望遠にしたり、広角にしたりと焦点距離を調整できるレンズが「ズームレンズ」です。ズームレンズを使えば、レンズ交換することなく画角を変えることができます。特に動画においては、遠くにある被写体に徐々に近づいていくなど、ズームによって画角が変わっていく様子が演出にもつながります。
ジンバル
「ジンバル」とはカメラやスマートフォンに取り付けて、手ブレや揺れを補正するアクセサリーです。動画撮影では一定の時間カメラを回し続けるため、手持ちでは揺れやブレが生じやすく、歩きながら撮影する場合はなおさらです。ジンバルは細かな振動だけでなく、カメラやレンズの手ブレ補正機能では抑えきれない大きな揺れやブレも強力に補正でき、プロのような滑らかな動きの映像を撮影することができます。
ロケハン
ロケーションハンティングの略語で、撮影場所を前もって下見することをいいます。イメージ通りの撮影ができるか、光の入り具合や音環境、人の流れや周囲の建物などを確認します。駐車場や機材の搬入ルートなどを調べておけば、スムーズに撮影に臨むことができます。
「ロケ」とは屋外(野外)で撮影することをいいます。ロケを行う際は撮影許可を取り、通行人や企業のロゴの映り込みにも注意しなければなりません。
香盤表
「香盤表」とは、撮影の段取りなどを記したスケジュール表のことです。撮影する順番に、撮影シーンやカット、所要時間、出演者、商品、小道具、照明など、撮影に必要な情報を細かく記入します。スタッフや出演者など関係者全員が共有し、香盤表に基づいて作業を進めていくため、誰が見てもひと目でわかるものでなければいけません。撮影の進行に関わるため、移動時間や休憩時間なども考慮し、正確に漏れがないように作成する必要があります。
カメリハ
カメラリハーサルの略語で、カット割やアングル、カメラの動きをチェックする撮影の進行確認のことです。出演者も進行・演技を行い、本番と同じように現場を再現し、本番で使用するカメラを使って行います。カメラの動きだけでなく、出演者の立ち位置や動き、照明や音響などのチェックを含む場合もあります。
カメリハで修正点や改善点をチェックすることで、本番撮影でのリスクを防ぐことができます。
アスペクト比
動画サイズ(解像度)の横と縦のサイズの比率を「アスペクト比」といい、「横サイズ:縦サイズ」で表します。アスペクト比はデバイスやプラットフォームによって、推奨されるサイズが異なります。一般的なアスペクト比はテレビ(地上デジタル放送)やYouTubeの「16:9」です。Instagramのリール動画やTikTokなどの縦型動画は、逆比率にした「9:16」です。
動画を制作する際には、公開・配信するデバイス、プラットフォームを想定し、あらかじめアスペクト比を決めておく必要があります。
さらに詳しく!動画の解像度とは?代表的な動画サイズと解像度の選び方などを解説!
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ぼかし
「ぼかし」とは「ボケ」や「ボケ味」とも呼ばれ、意図的に被写体の背景(または前景)をぼかすことを指します。ぼかしの出方や程度は、絞り、焦点距離、被写体との距離によってコントロールします。
絞りの値(F値)を小さくする(開放側にする)ほど、焦点距離が長い(望遠レンズ)ほど、また被写体との距離が近いほど、ぼかし効果が強く表れます。
ぼかしにより、被写体をより際立たせたり、背景を幻想的にしたり(夜景の光など)と表現の幅が広がります。また、動画の場合はピントの位置が変わる様子を見せることも演出につながります。
フィックス
「フィックス」とはカメラを固定して撮影する技法のことで、基本のカメラワークです。手持ちでは手ぶれが起きるため、三脚や壁、棚などにカメラを固定して撮影します。画面が動かないため被写体の表情や細かな動きも見やすく、安定感のある映像になります。インタビュー動画の撮影や重要なセリフのカットなどに使われます。
パン
「パン」はカメラを水平方向に振りながら撮影する技法のことで、「パンニング」とも呼ばれます。かつて広大な風景(パノラマ)を見せるためにはカメラを左右に振って撮影していたことに由来します。
パンは、旅客列車など横長の被写体や広い景色・状況を見せるシチュエーションや、水平方向に動く被写体を追いかけたり、登場人物の視線の動きを表現したりする際に用いられます。
パンで撮影をするときは移動速度にも注意します。動き始めと終わりはゆっくり、途中は一定速で少し早めに動かし、パンの終わりにいちばん見せたい被写体を映します。
ティルト
カメラを垂直方向に振りながら撮影する技法を「ティルト」といいます。カメラを下から上に動かすことを「ティルトアップ」、上から下に動かすことを「ティルトダウン」と呼びます。また、ティルトのことを「縦パン」、ティルトアップを「パンアップ」、ティルトダウンを「パンダウン」と表現することもあります。
ティルトは高層ビルやタワー、滝など縦長の被写体や人物の全身など、被写体のディテールや大きさを表現する際に用いられますが、被写体が人物の場合、感情表現の演出としても使われます。ティルトアップは気持ちの高ぶり、ティルトダウンは気持ちの落ち込みを表現します。
ズーム
カメラは固定したまま、レンズの焦点距離を変えながら、被写体に寄ったり引いたりする撮影技法を「ズーム」といいます。被写体に寄ること(レンズを広角側から望遠側に操作すること)を「ズームイン」、被写体から離れること(レンズを望遠側から広角側に操作すること)を「ズームアウト」といいます。
ズームインは特定の被写体に注目させたり、被写体の細部まで見せたりする際に用いられます。一方、ズームアウトは被写体と周囲の位置関係や状況を伝えたり、開放感を表したりする効果があります。
トラック
「トラック」とはカメラを移動しながら撮影する方法のひとつで、動く被写体に合わせて並走したり、追随したりする撮影技法です。被写体が走ったり、乗り物に乗っているシーンなどでよく使われ、被写体との距離を一定に保ちながら撮影します。
移動撮影は臨場感や迫力を伝えることができ、移動のスピードを素早くすることで興奮、ゆっくりと追いかけることで緊張感を表現します。
最近ではジンバル(手ブレ補正装置)を手持ちカメラに取り付けることで、撮影者が移動しながらでも滑らかな映像を撮影することができますが、シチュエーションや求められるクオリティによっては専用の機材やスピードの調節など技術が必要なため、プロに依頼するのがおすすめです。
そのほか、移動撮影のひとつで、被写体に近寄ったり遠ざかったりする撮影技法「ドリー」があります。カメラが前進して被写体に近づくことを「ドリーイン」、後退して被写体から離れていくことを「ドリーアウト/ドリーバック」いいます。
被写体に近づいて注目させたり、逆に離れていくことで被写体の周囲の状況を見せるという点では「ズームイン」「ズームアウト」に似ていますが、ドリーはカメラ自体を動かすものでズーム機能を使うわけではありません。ドリーインは、見るもの自身が近づいていくことで迫力や躍動感、親近感を与える効果があります。ドリーアウトは遠近感や立体感が強調され、別れや孤独感を演出する効果があります。
さらに詳しく!「カメラワークとは?映像制作に重要なカメラワークと構図の基本を解説」
まとめ
今回は「動画撮影で押さえておきたい用語20選」として20の用語について解説しました。引き続き「Part2」でも、動画撮影の現場で使う専門用語を解説しますのでぜひお役立てください。
いま、動画はスマートフォンやコンパクトカメラでも気軽に撮影できますが、今回ご紹介したようにクオリティを求める場合は、専門の機材やライティングの知識、技術、高度なカメラワークが必要です。当社は、大型スタジオからキッチンスタジオまで全国に8つの撮影スタジオを完備し、最新の撮影機器や撮影セット、小道具を備えています。スタジオ撮影から国内ロケ、海外ロケ、ドローン撮影などあらゆる撮影に対応し、リモートでの撮影立ち合いやディレクションも可能です。
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